ニュース
2024/03/15 今日の新宿
【3月15日】卒業式を実施しました。
第76回卒業式を実施しました。
校長式辞は次の通りです。
ただいま、卒業証書を授与した三百十五名の皆さん、卒業おめでとう。心からお祝いを申し上げます。
卒業式にあって、様々な思いが去来することと思います。その中で、まず、思いをはせていただきたいのは、これまで皆さんを見守り、支え、導いてこられた、保護者の方をはじめ多くの方々に対しての感謝の気持ちです。皆さんは、この場にいて、新たな道に踏み出そうとしています。今、この時、多くの方々から受けた温情をわすれてはいけません。
さて、皆さんが三年前の四月、入学式に臨んだ際に志したことは達成できましたか。
私は、その入学式の場で、次のようなことをお話ししました。
これからの指導者は、時代や社会の変化に敏感であり、即応できる柔軟性を持たなければなりません。ともに働く人々を強くけん引するというよりも、困難をともに乗り越えられるよう、チームにまとめていくリーダーでなければなりません。そして、指導者すなわちリーダーに求められるのは、周りの人々に目標とされ、尊敬されるとともに、そうある努力を惜しまない人物であります。さらに、自分の後に続くメンバーを次のリーダーに育てていくことができる人物です。「目指す人を越え、その時の自分を超える人を育てる」これができるリーダーとなっていただきたいと思います。
そして、リーダーとして、次に続く人材に「自分を超えてみろ」といえるだけの知識、技能、行動力が自分自身にあるか常に振り返っていただきたいと思います。
本校の教職員はそのために様々な課題を諸君に課していきます。野球の練習で行うノックに例えれば、先生たちは、捕るのが簡単なボール、速くて強いボール、時には諸君には手が届かないと思ってしまうようなボールを打ってくるでしょう。しかし、諸君が捕るのが簡単なボールを疎かにし、速くて強いボールから逃げ、さらには、自分には手が届かないと考え、捕るために動こうとも手を伸ばそうともしなければ、永遠に諸君は成長しないのであります。
このようにお話をしたことを覚えているでしょうか。この三年間、皆さんは飛んできたボールに果敢に手を伸ばし、捕ろうと努力を続けてきたでしょうか。
今日この日に、もう一度自分の高校時代を振り返る時間を取っていただきたいと思います。
振り返れば、皆さんが本校で学んだ三年間は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという未曾有の厄災のなかで、厳しい制約を受けながら過ごしたことを抜きに考えることはできません。
全く予期していなかった経験をされたことでしょう。むろん、皆さんだけではなく、日本中の、さらには世界中の皆さんと同年代の生徒や学生が同様の苦しい経験を味わってきたわけです。
本校での学びで大きな役割を果たす行事においても中止や開催方法の変更を迫られることがありました。
中でも、本校の伝統行事である臨海教室は実施できず、館山への遠足に替りました。皆さんが訪れた館山の地は、百年前の先輩たちから愛されてきた地です。先生たちは、皆さんに少しでもその雰囲気を味わわせたいと計画し、先輩たちの協力で実現しました。
また、修学旅行では、行き先を変更し、全てバスによる団体行動のみという大きな制約の中実施されました。しかし、その中にあっても友人とともに過ごす時間を大いに楽しみ、旅を満喫する皆さんの姿に、実施できてよかったという思いが強くこみ上げてきました。
本校教職員は、皆さんに新宿高校生として、これまでの皆さんの先輩方が歩んできた道と同じような道をできるだけ歩ませたいと、日々検討し、議論しながら学校を運営してきました。
しかし、感染拡大という未知の事態の中で、時にはかなり厳しいお願いをしなければならないこともありました。皆さんは本当によくがんばっていただいてきたと思います。ここにあらためて感謝します。ありがとう。
コロナ禍のこの日々、人生の大切な節目の場や舞台を失ったこともあったでしょう。しかし、日本中の、いや世界中の誰もが、みな平等に何かを失ったのかもしれません。しかし、皆さんはそれを乗り越え、ここにいるのです。
これまでの事は意味があったのか、これから臨むことは意味があるのか、と思うこともあるかもしれません。今、この場では、これからの自分に様々な思いを持っていることでしょう。
そのことに、あえて例えを用いて答えるならば、人生には季節があって、常に収穫の時とはかぎりません。しかし常に種をまき続けることが大切なのだということです。
今日(こんにち)、私たちは気候変動と大規模災害、感染症パンデミック、人口・食料問題、貧困と社会格差など、数多くのグローバルな課題に直面しています。
皆さんの真価は、当事者として、課題に正面から取り組み、解決に向かう指導者として、本校で学んだこと、今後学ぶことを駆使して、これから皆さんがどのような働きをされていくかにかかっていると言えます。
たとえ遠い道のりであっても、皆さんには、その確固とした学識と創造的な思考力によって人々と社会に貢献していただきたいと思います。そして、指導者として社会の人々から必要とされることによって、新宿高校卒業生としての立場も確固たるものになると思います。
私が大変お世話になった方から、いただいた言葉に「うまくやろうとせずに、正しくやりなさい」というものがあります。
仕事をしているうえで、また、生活をしているうえで、人は様々な課題にぶつかります。この課題に真正面から取り組むのは本当に骨の折れることです。私たちは直面する課題をうまくかわしたり、決められた手順をごまかしたりすることで、課題を乗り越えたと思いたくなるものです。
しかし、それではいけません。正しくやりなさい。正しくやることは時に遠回りであったり、大きな労力を要することになったりするかもしれません。でも、皆さんは指導者となる人たちです。先頭に立つ人たちです。ごまかしてうまくやるのではなく、果敢に課題に取り組み、正しくやってください。そのような人に、人々はついて行きます。私自身もそうありたいと思い続けてきました。
私は、皆さんにとって、よき校長であったでしょうか。
あらためて申し上げれば、本校の創設の根本精神である校是は「全員指導者たれ」です。百年前に本校が建てられたときからこの校是のもと、多くの先輩が、優秀な指導者たるべく社会に向けて巣立っていきました。そして、現に指導者として社会の様々な場面で先頭になって課題を解決してきました。本日卒業を迎えた三百十五名の皆さんが新たにここに加わります。皆さんには、将来の日本や世界の直面する課題に果敢に取り組み、導く指導者たる存在になっていただきたいと心から思っています。
結びに、今日の卒業の日まで、皆さんを支え励ましてこられたご家族やご親族の方々もさぞやお喜びのことと思います。
ご列席の保護者の皆様、卒業生の皆さんに代わり心から感謝しお祝いを申し上げたいと思います。卒業生の皆さんは、今、とても晴れがましく、決意に満ちた目でこちらを見てくれています。ありがとうございました。また、これまで本校への御理解、御協力、本当にありがとうございました。
ご列席の来賓の皆様にも、七十六回生の晴れの門出を見届けていただき、心から感謝申し上げます。
卒業生の皆さん、ここにいる誰もが、大家族として、あなたを応援しています。
さあ、胸を張り、大きく一歩を踏み出してください。
そして万感の思いを込めて、もう一度申し上げます。
皆さん、卒業おめでとう。
令和六年三月十五日
東京都立新宿高等学校長 藪田 憲正
今朝の新宿の空です。
76回生の皆さんがこの澄み切った青空のもと、翔び立っていきました。
幸多からんことを祈ります。卒業おめでとうございました。