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東京都立立川国際中等教育学校

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2023/03/27 タチコクギャラリー

3月24日(水)令和4年度修了式

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 令和4年度の修了式の日がありました。今回の修了式は、1~5年生の生徒全員が第1アリーナに集まって行いました。

校長講話、生活指導部の先生の話の後、様々な活動で成績を残した生徒たちの表彰がありました。

修了式の後、この今年度(この3月)で立川国際を離れる先生方の紹介がありました。

 

〈修了式校長講話〉

 今日は、全校生徒が集まって対面で式が行えます。6年生が卒業してここにいないことを寂しく感じますが、やはり、こうやって皆さん一人一人の顔を見ながら話ができることをとても嬉しく思います。

 修了式は、年度の最後の式典であり、次は4月の始業式です。年度の終わりに当たるこの時期になると、いつも人の営みの不思議さと力のようなものを感じて感慨深いです。それは、時間という客観的な事実は何も変わらない、時間は何があっても何が起こっても同じように時を刻んでいきますが、3月31日が終わって、4月1日になると、例えば人の動きがあって変化をするのに、途切れることなく人は新たな生活を始めるという人の営みの不思議と新たに始めることができるという人の力です。時間そのものは変わらず時を刻み続けていて、そこに意味をもたせているのは私たち人だということです。そのまさに、1年間の中でも最も大きな意味をもたせることができる、今年度の最後の式典に当たり、3つの言葉で皆さんに私の思いを伝えたいと思います。

 その3つの言葉は、「始める」「育てる」「繋ぐ」です。

 

①「始める」

 2月にPTAの協力を得て、ジャパン・ハートの吉岡秀人医師に講演していただきました。今では5千人を超える人々が参加する活動となっているジャパン・ハートですが、約28年前に吉岡医師が「始めた」時は、吉岡医師たった一人でした。そして、医大を卒業して医者になったのに、なぜそんな医療設備も施設も整わない、人材も不足している国にわざわざ出かけて医療に当たるのかと冷めた目で見られていました。それでも吉岡医師は自分の信じる思いの下、第一歩となる行動を自分から「始め」ました。

 先日、大興奮の中終了したWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)。その第1回大会は、17年前の平成17年、西暦2006年)でした。開始に当たっては、複雑な大会規定や、特定の国に利益があるのではないかという批判があり、冷ややかな見方がありました。当時の日本チームを率いた監督は、本塁打の世界記録をもつ王貞治さんでした。王さんは、「先ずは始めよう。そして皆で育てよう」と言いました。そして日本はその第1回大会で優勝しました。

 ものごとの始まりには、必ず「始めた」人がいます。その第一歩は必ずしも容易なものではないでしょう。よりよくするために何かをしなければという信念と踏み出す勇気があったと思います。

 

②「育てる」

 ジャパン・ハートの活動は、吉岡医師のたった一人の活動から、いきなり5千人を超える協力者を得たわけではありません。その過程において、吉岡医師は、活動を始めたミャンマーから、カンボジア、ラオス等の国々に活動を広げて「育て」、海外だけでなく日本国内においても災害に対する医療支援を行っています。その吉岡氏の地道で決して諦めない努力がジャパン・ハートの活動を大きく「育て」ました。

 WBCも、第1回大会では16の国・地域が参加し、観客動員数は約73万人でしたが、第5回となる本大会では、28の国・地域が参加し、観客動員数は大会史上初となる100万人を突破しました。これも、いきなりそうなったわけではなく、そこに至るまでの過程で、参加した選手一人一人の活躍や思いがWBCを「育ててきた」結果と言えると思います。

 

③「繋ぐ」

 吉岡医師は、日本と海外を行き来する大変多忙な生活を送っており、本校での講演会の翌日には再びミャンマーへ戻るという日程の中、次代を担う若者へ思いを伝えるという観点から、本校での講演を快く引き受けてくださいました。講演後には別の予定が入っている中、ぎりぎりの時間まで立国生との対話の時間を取ってくださり、立国生からの質問に答えてくださいました。吉岡医師が立国生を決して子供扱いせず、真っすぐに思いをお話しいただいたことで、国際社会で活躍し、貢献するリーダーとなることが期待される立国生に、その思いを「繋げた」と考えます。

 WBCで不振に苦しんでいた村上宗隆選手は、メキシコ戦で3ランホームランを打ち日本の勝利を引き寄せました。第2回大会での日本の優勝を見て、小学校の卒業文集に「WBCに選ばれて世界で活躍したい」と書いた村上選手は、監督の「最後は任せた」という言葉を受け、日本の優勝へと「繋げ」ました。アメリカのメジャーリーグで投打の二刀流で活躍する大谷翔平選手は、「次の世代の子供たちが「自分たちも頑張りたい」と思ってくれたら幸せ」と語り、思いを「繋げ」ました。いずれも次に「繋げる」ための不断の努力を行ってきたからこそできること、伝えられる思いだと考えます。

 

 皆さんにお話した3つの言葉に共通している考え方に気が付いたと思います。それは、「始まる」でも「育つ」でも「繋がる」でもなく、「始める」「育てる」「繋ぐ」であり、そこには自分自身の意志があります。主部は「私が」です。

 先日卒業した10期生の答辞には、節目となる10年目に入学したことの自負と、勉強だけでなく行事に情熱をかけて過ごしてきた充実感が溢れていました。彼らはバトンをここにいる11期生以降の皆さんに「繋げ」ました。

 さあ、新たな年度が始まる大きなチャンスがやってきます。あなたの意志をもって、自分が「始めて」「育てて」「繋いで」、共に立国の歴史と伝統を創造しましょう。私達には次に続く人たちに大きく「育て」て「繋ぐ」責務があります。そのためには、私達一人一人が「始める」勇気と続ける努力が必要です。立国生一人一人に期待しています。