校章

東京都立立川国際中等教育学校

ニュース

2023/01/06 タチコクギャラリー

1月6日(金) 第3学期始業式【校長挨拶】

542.JPG 

 みなさん、新年あけましておめでとうございます。

 新しい年が始まりました。新しい真っ白なノートの1頁目が目の前に開かれてあるような気持ちがします。みなさんはどうですか。

 さて、今日から3学期です。3学期は、学年の振り返りをしてまとめをする重要な時期であると同時に、その学年の「0(ゼロ)学期」でもあります。

 冬季休業は、2週間程度の短い期間であり、様々な行事がある時期であることから、あっという間に終わってしまったという感覚ではないでしょうか。皆さんの中には、計画していたことが十分にできなかったと思っている人がいるかもしれません。振り返って反省することは大切ですが、時間を巻き戻すことはできません。それでは、できなかったことを取り戻せないかと言えば、そんなことはありません。過去をかえることはできなくても、私たちは誰でも、未来を変えることができる。振り返って反省したら、あとは前を向くだけです。その反省に基づき、これからどうするか、その後の思考と行動で、いくらでも過去は取り戻せます。

 そのことを示した人がいます。フィギュアスケーターの浅田真央さんです。彼女は、金ダルをかけてソチオリンピックに臨みました。しかし、ショートプログラムで失敗してしまい、16位になってしまいます。思いもしなかった結果に彼女は落ち込み、国民も金メダルは無理だと思いました。彼女にはフリープログラムを棄権する選択しもあったかもしれません。しかし彼女は再びリンクに戻りました。そして、フリープログラムでは記憶に残る演技を行いました。金メダルのプレッシャーがないからできたのだという評価がありました。確かに金メダル争いの重圧は想像を絶するものでしょう。しかし彼女が取り組んだプログラム構成は、プレッシャーがないから成功したというほど単純なものではありませんでした。彼女は、3回転半を含む6種類の3回転ジャンプを計8つ跳ぶという、当時、女性の選手では誰も成しえなかったことに果敢に取り組み達成しました。フリープログラムに出場して失敗したら、もっと厳しい視線が注がれるかもしれないということは容易に想像できます。絶対に失敗しないように、プログラム構成をもっと簡単にすることもできたかもしれません。しかし彼女は勇気をもって未来を変えようと難易度を下げることなく挑戦しました。その挑戦が成功したのは彼女のそれまでの努力が力になったからだと思います。最後のポーズを決めた彼女は涙を流し納得したように数回頷くと、観客に向かい、笑顔で挨拶をしました。その時流した涙は美しいものでした。努力は裏切らないということを実感しました。

 同じくオリンピック3連覇という偉業に挑戦したスケーターがいました。羽生結弦さんです。彼もまた、誰も挑戦していない4回転半に挑み、惜しくも転びましたが、認定されました。しかし彼は金メダルを取ることはできず、その時、「報われない努力だったかもしれないけれど」と言いました。確かに、努力がいつでも報われるとは限りません。報われない努力もあるでしょう。しかし、「努力に裏切られた」とは彼は言わなかったと思います。その時は努力が報われなくても、努力は決して裏切りません。努力は前に進む力になります。

 浅田真央さんのことを思い出すと、もう一人、私が担任をしていた時の生徒のことが自然と思い出されます。彼女は、将来の夢に向かって希望していた大学を受験しました。大変な努力家でしたが、希望した大学には合格せず、希望の順番としては必ずしも上位ではなかった大学に進学しました。しかし彼女はそこで後悔をして過去に拘泥し、目標を見失うことはありませんでした。彼女の目標は大学合格ではなく、その先の夢だったからです。優秀な成績で大学に合格し、授業料が免除となる特待生として入学して、その後、大学を卒業するまで、努力を続け、特待生であり続けました。そして、大手の外資系ホテルに就職し、その後、ついに自分の夢を叶えました。その夢は、いわゆる名門と言われる大学を卒業したとしても当時、叶えることは相当難しいものでした。彼女の努力は彼女を決して裏切らなかった。彼女が前に進み、夢を叶える大きな力となりました。

 みなさん立国生は、努力することの価値をよく知っている生徒です。附属小学校ができ、中等生も使用するラーニング・コモンズとのことを皆さんきれいな施設だと褒めてくださいます。しかし、建物はできた瞬間から古くなります。しかし、そこで学ぶ国生は決して色褪せることなく、輝きを増します。それは、立国生が、努力ができる人たちだからです。

 最後に、月曜日からの授業開始に当たり、約2週間前の終業式で話したことをもう一度話します。立国生のミッションは、国際社会に貢献するリーダーになることです。その皆さんに再度、伝えたいことです。

 世界は、年が新しくなっても、安心して平和に暮らせる人たちばかりではありません。平和を願ってもそれだけでは残念ながら平和が続くということではありません。日本は、積極的平和外交を行っています。積極的平和外交とは何かを考える際、必要となる視点が「地政学」です。地政学とは、地学と政治を合わせた学問です。残念ながらその名前の科目はありません。しかし、みなさんは地理と政治経済をそれぞれ学んでいます。なぜ地理が世界平和を考える上で必要な学問なのか、是非、地政学に関する本を読んでみてください。そして、明日から始まる地理と政治経済の授業では、地政学という視点を意識しながら学んでください。

 最後に6年生のみなさん、こころからは特に健康が大切です。体調には十分気を付けて、これまで同様、努力をして前に進んでください。皆さんには、それができる力がある。ぜひ、努力を力にして夢を掴んでください。