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2025/07/29 校長室だより

校長室だより「部活やろうぜ」令和7年7月29日

 夏期休業が始まりました。
 あえて「夏休み」と言わず、「夏季休業」と言うようにしています。夏季休業は、授み、というだけで、学ぶこと自体をお休みするわけではないからです。夏季休業というまとまった時間をとることができるこの機会に、それぞれの生徒がそれぞれの学びをしています。

 部活動も学びの一つです。部活動は、スポーツや文化、科学等に親しみ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等の育成のために行われます。授業などで学習したことなども踏まえて自らの適性や興味・関心等をより深く追求していく機会であり、生徒自身が授業等において学習する内容について改めてその大切さを認識する機会にもなります。
 学校における部活動の在り方については様々な議論を踏まえ施策も進んでおり、その形が変わりつつありますが、先生にとっては、授業以外で生徒のことを見ることで、授業では見られない新たな側面を見ることができるなど、スポーツや文化活動を行うということにとどまらない大変有益な教育活動でもあります。

3日間で8部門を視察 私は今年度、東京都高等学校文化連盟の理事長という職も務めており、東京都の全ての高校生の文化活動を支える活動に携わらせていただいています。その一環で、文化部のインターハイとも言われる全国高等学校総合文化祭の視察のため、7月26日(土)から香川県に来ています。文化部の全国大会ということで、それぞれの部門でハイレベルな発表を見ることができます。7月31日(木)まで香川に滞在し、できるたけ多くの部門の発表を視察したいと思っています。
 東京都高等学校文化連盟では理事長の他に写真専門部会長を務めさせていただいています。それに加え、今年度は縁あって高等学校文化連盟全国吟詠剣詩舞専門部会長を務めさせていただき、開会式で御挨拶させていただきました。
 世田谷総合高校の生徒は残念ながら出場していませんが、全国の高校生の活躍を見ることができて、私自身も勇気付けられ、世田総生も、東京都の高校生も、みんなもっと元気になればいいなと思いました。

吹奏楽部門会場 全国高等学校総合文化祭には吹奏楽部門があります。世田総吹奏楽部も花みず木フェスティバルをはじめとするイベントや定期演奏会などで演奏を披露するとともに、様々な大会に出場しています。
 吹奏楽をはじめとする高校文化部を題材にした小説、漫画、アニメがあり、これをきっかけにして新しく部活動を始めたという人もいらっしゃると思います。吹奏楽では、「響け! ユーフォニアム」(武田綾乃さんによる小説及びそれを原作とする漫画及びアニメ)という作品が知られているものの一つです。
 「響け! ユーフォニアム」では、部として、全国大会出場を目指すのか、大会での入賞を目指さず楽しく部活をするのかの選択を迫られ、多数決で全国大会出場を目指すことになるものの、部員同士の思いの違いや、様々な友人関係の中での葛藤など、様々な困難を乗り越え、高校生たちが成長していく様子が描かれています。
 この作品中の登場人物も、世田総吹奏楽部の生徒も、それぞれ目標をもって活動に取り組んでいます。「演奏がうまくなりたい」「大会で優勝したい」など、様々な目標が考えられますが、「学校の部活動」としてみたときには、先にも述べたように、「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等」が目指すものとなります。吹奏楽という文化活動を通して、試行錯誤すること、挑戦すること、他の部員と協調したり議論したり、様々な経験を通して、授業だけでは学べないたくさんのことを学び、より一層成長することを願っています。

 吹奏楽に関連して、総合学科の特色である課題研究につながる話題を。
 フルートという楽器があります。フルートは木管楽器の一つで、白銅、銀、金、プラチナ、木など、様々な材料で作られています。「木管楽器」とは奏者の唇の振動によらない方法で発音する管楽器の総称であり、金属でできていてもフルートは木管楽器です。
 このフルートは、1971年のColtmanの実験により、材質によって音に違いがないことが示されています。しかし、現在でも、演奏する人からは、材質によって音色や吹き心地が違うことが指摘されています。そのため、楽器メーカーも、様々な材質でフルートを製造しています。つまり、聞いている人には同じ音に聞こえるが、演奏している人は違いを感じる、ということです。
 このことに疑問をもった九州大学芸術工学部の大学生(当時)であった枝美穂子(えだ みほこ)さんは、材質が異なる6種類のフルート(全て銀メッキが施され見た目や触感は全く同じ)を用意し、30名にフルートを吹いてもらい、「抵抗感がない」「音が鳴りやすい」などの吹き心地に関する項目と、「明るい」「華やか」など音色に関する項目についてアンケートに答えてもらう調査を行いました。その結果、材質によって演奏者が感じることに差があることが明らかになり、枝さんは、指に伝わる振動などが影響していると考えました。しかし、木管楽器の管壁振動が音色に与える影響は無視できるレベルであることが過去の研究から分かっていました。枝さんは、音の測定とともに、加速度ピックアップという装置を用いて改めて管壁振動を測定しました。その結果、材質による音の違いはありませんでしたが、管壁振動には材質による違いがあることが分かりました。枝さんは、フルートのライザーが影響しているのではないかと考えましたが、卒業研究の段階では明らかにすることはできませんでした。

 普段の様々な学びの中から疑問を見つけ、それをとことん追求する課題研究。世田谷総合高校ならこの課題研究にじっくり取り組むことができます。


 枝美穂子さんの卒業研究論文「フルートの材質による演奏者実感と音響特性の差異に関する研究」はこちらから読むことができます。