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2025/02/26 イベント
1泊2日の伊豆大島巡検!!
2025年2月22日(土)〜23日(日)の1泊2日で伊豆大島巡検を行いました!
12月末に実施予定でしたが、冬型の気圧配置に伴う強風の影響で船が欠航となったため、延期をして今回の実施となりました。
2〜5年生の有志14名が参加し、事前学習を通じて学年ごとに探究テーマを決めて、巡検に臨みました。
【1日目】
朝7:30に竹芝桟橋に集まり、ジェット船「セブンアイランド」に乗船し、10:30に伊豆大島の岡田港につきました。
ここからマイクロバスに乗車して島内を時計回りに巡ります。椿まつりの開催時期であり、伊豆大島一周道路沿いに植えられている椿が満開でした。大島公園の椿園を抜けて筆島へ向かいます。
筆島は伊豆大島の母体を作った火山の火道にできたマグマによって変性した硬く緻密な岩石で、波や風の侵食から耐えて残ったものです。
海面からの高さは約30mもあります。その背面の海食崖にはいくつもの厚い岩脈と、高温のマグマが酸化して固まった赤茶色の層を観察できます。
カキハラ磯では、ボムサックという地形を観察しました。波浮港を形成した水蒸気噴火のときに噴出した火山弾が着弾したくぼみがボムサックであり、その下部が圧縮されることで侵食から免れて削り残されたことで塔状の地形を観察することができます。
昼食はジオガイドさんが経営しているカフェ「押し花」で、伊豆大島の食材を使ったランチをいただきました。お店の方からは伊豆大島の暮らしについてお話しいただいたり、子どもたちの疑問に答えていただきました。
次に波浮港を訪れました。波浮港はマグマ水蒸気噴火によってできた火口が、地震によって崩れて湾になったところにつくられた港です。下総の秋廣平六によって開港されました。江戸時代には風待ち港として賑わい、港の回りの火口壁に沿って当時に建てられた旅館などが並んでいます。
踊り子の里資料館では港や旅館の写真などが展示してあり、当時の様子を知ることができました。火口壁にできた階段を登りながら、波浮の集落の様子を観察しました。
次に地層大切断面を観察しました。約1万8000年前の伊豆大島火山の噴出物が積み重なった層です。溶岩流やスコリア、土壌の互層が何重にも重なっています。
波打つような層ですが、地形に沿って堆積した地層なので褶曲ではありません。地層をよく観察すると、不整合面や火災流堆積物などの特徴的な地層を見ることができました。
次にメモリアルパークを訪れました。ここは2013年の台風による大雨によって土砂災害が起きた跡につくられた公園です。谷沿いにつくられた大金沢堆積工では巨大な堆積工や砂防堰堤を見学しました。最後に伊豆大島最大の集落である元町を訪れ、班別行動となりました。大型商店の視察や観光客へのインタビューを行い、班ごとに探究テーマの調査を行いました。
予定通り17時過ぎに宿に入りました。夕食でも伊豆大島の明日葉やハンバごはん、島で採れた魚介類を使った料理をいただきました。
夕食後は星空観察も行い、明日に備えて22時に就寝しました。
【2日目】
2日目は三原山のトレッキングです。朝7:30に宿を出発し、大島温泉ホテルでジオガイドさんと合流しました。外輪山に位置する三原山山頂口に向かい、約8kmのトレッキング開始です。
山頂口からは外輪山を降りてカルデラ底に入り、1777年の安永の噴火のときに噴出したホイホイと1986年の噴火のときに噴出したアア溶岩を観察しました。
同じ玄武岩の溶岩ですが、温度条件などによって流れ方が変わり、現在まで残っている溶岩の形から噴火の様子を推察することができました。表面に凹凸のあるアア溶岩には植物の種子が入り込みやすく、イタドリやススキなどの草本が生育します。そこから土壌が形成されていき、低木のイヌツゲやウツギなどが入り込んで森が作られていきます。
カルデラの底を進んで中央火口丘である三原山に登ります。
山頂につくられている三原神社は1986年の噴火の際に被害を免れた奇跡の神社として現在も鳥居と祠が残されています。
山頂からは伊豆半島から房総半島までを一望することができ、地球の大きさを体感しました。アア溶岩の断面や火口から流れてきた巨大なスコリアの塊なども観察しながら、山頂火口を目指します。
山頂火口では直径300メートルものダイナミックな活火山の火口を観ることができました。
今回は時間の関係で火口を一周するお鉢周りはせず、裏砂漠へ向かいます。
スコリアが降り積もった中央火口丘を下りながら、カルデラの北西方向へ進みます。
1986年に全島避難まで拡大した割れ目噴火の火口を横切りながら、カルデラを進んでいきました。伊豆大島には約80もの噴火口があり、北西-南東方向に並んでいます。噴火口列の先には箱根や富士山があり、フィリピン海プレートの動きに沿って噴火が起きていることが分かります。
裏砂漠では風の影響で草本類はほとんど存在しない環境を観ることができました。砂漠をつくる玄武岩質の黒いスコリアを観察しました。スコリアの表面に薄い膜が作られると構造色をつくり、綺麗な青や紫に耀きます。各々のお気に入りのスコリアを探して写真に収めます。
裏砂漠からは溶岩流の跡であるジオロックガーデンを抜けて、再生の一本道へ。
今回の目的の一つでもある植生の遷移を観察します。裏砂漠から火口から離れるにつれてハチジョウイタドリやススキなどの先駆的な草本類から、低木のニオイウツギ、ハチジョウイヌツゲ、ヒサカキなどと植生が移り変わります。
1777年の溶岩流の上には250年かけて作られた森が形成しており、背の高いイヌツゲやヒサカキ、アオキ、シロダモなども入り込みます。外輪山に近づくと、林床には土壌がつくられ、オオシマカンスゲなどの陰樹やシダなども生えてきます。植物たちの生きる知恵を学び、活火山の島という特殊な環境がつくる生態系への興味を深めることができました。
理科で学習する植生遷移の様子を一度にみることができるのも伊豆大島の魅力です。
大島温泉ホテルでは、駐車場の露頭を観察しました。
スコリアや火山灰で作られた地層に直接触りながら、噴火史を読み解きました。
バスで岡田港へ戻り、昼食を食べました。
ぶらっとハウスさんに作っていただいた特製ジオぶら弁当を港の休憩所でいただきました。
ぶらっとハウスさんは今回の三鷹中等教育学校のために、農産物直売所に入る伊豆大島の地物を使ったお弁当を作ってくれました。地層大切断面に見立てたおにぎらすや、大島の地形を形どったつくね、大島高校の鶏卵を使ったタルタルソースなど、愛情たっぷりのメニューで、子どもたちも大満足でした。
岡田港から14:30発の大型船「さるびあ丸」に乗船します。
船内からは伊豆半島や房総半島の地形や、沿岸部の工業地域などを観察することができました。
横浜大桟橋で下船後、予定通り18:00に解散しました。
伊豆大島フルコースの巡検でしたが、14名全員が怪我や体調不良もなく、充実した2日間を過ごすことができました。
本校がフィールドワークを始めて3年目ですが、毎年コースを改良しながら2日間で伊豆大島の自然と生活を体感する巡検を実施することができました。
現地のジオガイドの方々や本校のためにお弁当を作ってくださった農産物直売所など多くの島民の方たちのご協力を得ながら、東京では経験できないような大自然と島で暮らす人々の生活を体感することができました。ご協力いただきました皆様に感謝申し上げます。
実際の自然や社会は、教科や受験勉強で学ぶような体系的なものではなく、いくつもの複合的な要素が重なって成り立っていることを、子どもたちは肌で感じてくれました。
理数研究プロジェクトチームでは、これからもフィールドワークを通じて、実際に見て、感じて、学ぶ体験を充実させていきます。
★ジオガイドさんのブログにて、本校のフィールドワークをご紹介いただきました!(こちら)
<生徒の感想>
- 筆島など自然によって作られた面白い地形を知ることができた。パホイホイ溶岩とアア溶岩とかを実際に触れられてよかった。植生も火山と関係しているということを知れたのも面白かったし、学校で学んだことがところどころで出てきて嬉しかった。
- 本州と離れた生活の様子が見れて面白かった。物流についてはamazonが多いという本州との共通点や、7m風速の風が島では普通であることが印象に残った。島ならではの砂防ダムなどによる防災が知れてよかった。
- 教科書等で学んだ知識や見たことなどを生かし、実際に伊豆大島で地質や地層を観察することができた。また、三原山で教えていただいたパホイホイ溶岩やアア溶岩がどのようにして生成されているのかも知ることができた。今回の巡検を今後の理科や社会の学習につなげていきたいと思う。
- 伊豆大島などの大きな島に行ったことはなかったので、とても貴重な経験になった。火山活動によって形成された島の生態系や自然に着いて学べて良かった。
- 今回の巡検が初めての巡検っていうこともあって、巡検というものがどういうものかを知ることができて、よかったと思いました。今までに授業で習ったはずのことも、言われて思い出すことが多くあり、次に巡検に行く時はもっと知識を復習してから行こうと思いました。
- 今回初めて巡検に参加しました。教科書の中でしか見たことがなかった地層や、火山の被害など現地で見るからこそ地球との共存がいかに大切なことなのかを学ぶことができました。また、巡検のスケジュールには入っていなかった星空観察では都心では見れない星座を実際に見ることができ自分が過去に学んだことを活用できてよかったと思います。
- 普段、本州で過ごしていたら知ることのないことを知れて驚きが多かった。昔や今の島の人の生活方法や、島の地形などを知ることができた。実際に現地に行って学ぶことの面白さを知れた。
- カキハラ磯でのボムサックや、波浮港のマールのように、見たことのなかった地形を見ることができて楽しかった。また、自由時間にインタビューをすることができて自分の成長を実感できた。
- 城ヶ島のような堆積物とはまた違った、溶岩などもあってとても興味深かった。また、裏砂漠などの光っているように見えるスコリアも、真っ黒というイメージに反していて驚いた。
- 最初は、ほとんど地層や火山のことについて学べると思って参加したが、それだけでなく、植生や島の人たちの暮らし、島の歴史のこともたくさん知れて、とても良い経験になった。
- 座学だけでなく、実際に見たり触ったりするほうが楽しく学べるし、より記憶に残りやすいと思った。また、他の学年との意見交換や楽しい交流もできて、良かった。全体を通して、とても有意義なものになったので、他の巡検や地学に関するイベントにももっと参加していきたい。
- 火山島に初めて行ったので、溶岩を実際に触るなど新しい体験をすることができた。噴火の大きさや土砂災害の被害がどれくらいだったのかなどは、行ってみて初めて実感として得られるものがあったので、とてもよかった。これまで教科書だけで終わっていたものを、実際に見た感覚と結びつけて、理解を深め、知識として定着させることができると感じた。また、島に住む人の生活などは話を聞かないと分からないこともあり、そういったことも知れて興味深かった。
- 伊豆大島の地形やそれによる人々の暮らしの工夫を知ることができてとても楽しかったです。今後もいろいろな土地について知りたいと思いました。現地の人とお話しすることができたのがとてもよかったです。
- 同じ東京都であってもあまり関わりがない伊豆大島について多くのことを知ることができ、とてもいい経験になった。実際に自分の目で見て回るフィールドワークはかなり重要だと感じた。今後の探究などのテーマなどにも生かしていきたいと思う。
- はじめて宿泊付きの巡検に参加し、今までは歩くことができる範囲での観察のみであったが、今回は島全体を一周し、1日目と2日目を関連させながら、より多くのことを学ぶことができました。また、自由に散策できる時間も確保されていて、それぞれが調べたいことを調べられたり、ガイドさんや宿の方、食事を作ってくれた方などに質問をしたりなど、探究も交流もでき、充実した巡検になりました。それだけでなく、一緒に行ったメンバーが学年を超えて仲良く過ごすことができ、中高一貫らしさを感じました。
<生徒の学んだこと>
- 地元の人にインタビューしたこと。パホイホイ溶岩などを実際に触れたこと。ガイドさんがひとつひとつ溶岩の形がどうしてこうなったか説明してもらったこと。自然について全体的に印象に残った。先述の通りの風の強さや、それを防ぐために植えられた椿による防風林などが面白かった。地域ならではの理由があるのだと思った。
- 山頂から見た景色が印象的だった。東京湾から下田までを一望することができ、別に日本を批判しているわけでは全くないが自分が住んでいる世間の狭さを実感し、世界がどれだけ広いかを感じた。
- 印象に残っているものは二つあり、一つ目は押し花における話で、欠航時の対策はしてるだろうなと思っていましたが、多くても1週間くらいかと思っていました。しかし、実際に聞いてみると、1ヶ月分の食料を蓄えているということを聞き、予想より多く、またより離島よりのところはどれくらい蓄えているのかなっていう疑問も増えました。二つ目は、実際にスーパーとかに行ったことです。スーパーに関しては最低限の食料とちょっとしたお菓子しかないのかなって思っていましたが、知らないようなお菓子の種類とかが多くあり、他にも日常品とかもあり、東京のスーパー以上の品揃えで驚いたと同時に、ここが伊豆大島にとって大事な場所であることも感じました。逆に、自動販売機だと賞味期限切れのペットボトルが出るなど、スーパーとそれ以外での品揃えの差が大きいことも知ることできました。
- 大金沢堆積工の鋼製スリットが印象に残っています。今まで堆積工の存在を知らず、どのようなものなのかを想像できませんでした。大島に訪れ初めて見た際、仕組みを知った際大島で起きた災害の歴史と島の工夫、現代の技術が詰まったものだと感じ、もっとほかの災害対策についても調べて理解を深めてみたいと思いました。
- 三原山が印象に残った。教科書で見た二種類の溶岩に触れて違いを確かめることができた。また、今、生物の授業で勉強している遷移について実際に歩いて見ることができ、理解が深まった。
- 地層大切断面。元の地形によって層理面が曲面になることは知っていたが、谷になっている部分が特に厚く堆積しているのを見ることができて印象に残った。
- 側火山が1986年の噴火のときにどこにできたのかを知ることができた。(カルデラの外にできたことにより、全島民避難になったことを知った。)また、神津島と伊豆大島ではなぜ色が違うのかについてもチョコチップバニラアイスの説明でよくわかった。
- 地層大切断面を見たことが印象に残っている。地層がずっと続いているのを見て、実際に地層が層になって実在するのだと実感した。地層が波打っているのが、褶曲ではないということに驚いた。火砕流の層に土砂が含まれていたり、溶岩、火山灰、土壌の互層が見られたりすることから、地層から過去の出来事が考察できることが分かった。
- アア溶岩とパホイホイ溶岩の違いを実際に触ってみることで確かめられました。授業では粘性の違いと習っていたけど、触り心地や流れ方が全然違いました。今回で溶岩についての知識がより深くなったと思います。
- 波浮港の旅館が川端康成の「伊豆の踊子」の舞台になっていたのは知らなかったため驚いた。また、大切断面は実際の地層を見ることができとても圧巻だった。三原山も近年の噴火で実際に溶岩が流れ、そのあとが残っていることに衝撃を受けた。お昼ご飯や宿でのご飯も伊豆大島の特産品がかなり使われていることも印象に残った。
- 今回の巡検では、一つ一つに注目して学べることが多く、特に溶岩について新しく学べることが多くありました。重力に反して固まっているパホイホイ溶岩のでき方や、急速に酸化し固まってできた地層の岩脈、アグリチネートのでき方など、実際に実物を見ることができたからこそ、納得して理解することができました。特にアグルチネートに関しては、噴火の際に急速に酸化してできたスコリアの塊がマグマに乗って、転がりながらコーティングされている層を目の前に見ることができ、とても理解しやすいものでした。