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東京都立両国高等学校・附属中学校

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2024/01/16 高校生

カンボジアスタディーツアー

12月末に行われた第4期カンボジアスタディツアーには、多くの高校生が積極的に参加し、生徒たちは初めての東南アジア渡航という新たな挑戦を充実した6日間で終えました。この「私の未来を探す旅」と題されたツアーでは、姉妹校であるバイヨン中高等学校との交流や、アンコールワットの見学、地元の社会貢献活動への参加など、発展途上国での貴重な経験を通じて、多様な価値観や社会貢献の重要性を学び、将来への展望に新たな視点を得ることを目指しています。

今回のツアーでも、現地で多くの方々と交流し、異文化理解と共に、持続可能な未来への貢献に対する意識を育む貴重な機会となりました。以下はツアーのハイライトです。

 

 

写真(1)

現地1日目、姉妹校であるバイヨン中高等学校を訪れました。正門から校内の会場まで、温かい歓迎で迎えられ、姉妹校の生徒たちとのふれあいが始まりました。交流は、代表生徒による学校生活や放課後の過ごし方についてのプレゼンテーションからスタートし、日本の学校生活や音楽の授業についての説明では、日本の音楽教育普及を目的に、本校の生徒たちが、「故郷」の合唱や「It's a small world」のリコーダーとピアニカの合奏を披露しました。その後の小グループでの伝統・文化紹介では、英語を使っての質疑応答や紙飛行機を飛ばす交流などで盛り上がり、お互いの文化に触れ合うことで友情が深まりました。英語が上手いか下手か、は問題ではありません。今、目の前にいる相手と通じ合いたい、その想いがコミュニケーションの原動力です。何とかして伝えようと身振り手振りを交え、一生懸命に話す生徒たちのひたむきな表情が印象的でした。最後には、ソーラン節の法被を持参し、姉妹校の生徒たちに手渡しました。バイヨン校の生徒は初めての法被にワクワクした表情。両国生が着るのを手伝い、鉢巻を巻いてあげることでさらに距離が縮まりました。ソーラン節を一緒に練習し、披露することで、心が通じる瞬間となりました。全校集会では、まさかのラジオ体操に驚きました。1から8の数え方をクメール語で教わり、また一段と仲良くなって、最後にはバイヨン校の生徒と両国生が手をつなぐ様子もありました。「これを楽しみにしていたんだな」と交流の意義を感じる2日目でした。

 

 

写真(2)

夕方からのホームステイでは、生徒たちは近隣の村で異なる生活様式に戸惑いながらも、一緒に宿泊してくれた姉妹校の生徒たちやホストファミリーとの交流を通じて、ツアーの中で最も印象的な思い出を作りました。この交流と経験は、生徒たちの学びと成長を促し、異文化理解と国際交流の大切さに気づける素晴らしい機会となりました。鶏や豚の声で目覚めるなんて、東京ではできない経験です。睡眠不足や体調不良を心配しましたが、「もう何日かホームステイでもいい」という声もありました。頼もしいですね。

 

写真(3)

カンボジアスタディツアーの2日目は、上智大学アジア人材育成研究センターの訪問とアンコールワットの見学で、素晴らしいものとなりました。上智大学アジア人材養成研究センター研究員・上智大学特任助教で本校の卒業生でもある三輪悟氏から、現地でアンコール遺跡の保存に四半世紀以上携わってきた経験に基づき、昨年11月に完了したアンコールワット西参道修復工事に関する詳細な内容を中心にしてお話しいただきました。三輪氏の講演は、カンボジアの歴史と文化への深い関わりを感じさせるエピソードで満ち、生徒たちは興味津々に耳を傾けていました。その後、実際に西表参道を渡りました。先輩がカンボジアの地で築いた偉大な功績を肌に感じながらアンコールワットを訪れ、その歴史に触れることができたことは、生徒たちにとって非常に貴重な経験であり、同時に、アンコールワットの壮大な歴史や美しさに圧倒されたことでしょう。

三輪氏がご自身の経験から語ってくださった多くのメッセージのうち、人生の中で「自分が主役になる場面を作り出すこと」「本物に出会うこと」の大切さについて触れたお話は、生徒に深い感銘を与えました。生徒代表の片山さんはお礼の言葉で、「三輪先生のように、人生をかけられることを見つけたい」と述べていました。偏差値や学歴では測れない、「自分の人生を自分でつかむ」という「本当の幸せ」について、考えさせられたのだと思います。三輪氏が母校の生徒たちを温かく受け入れ、講演していただいたことに感謝申し上げます。これからも三輪氏の教えを心に刻みながら、生徒たちがより一層成長していくことを期待しています。

 

 

写真(5)

このツアーは文化や歴史だけでなく、現地の社会貢献活動に携わる日本人の方々との交流もあり、その中で2つの訪問先が特に印象的でした。

まず、SALASUSUの工房では、厳しい境遇におかれている女性たちに手仕事や製品製造の技術トレーニングが行われ、雇用と自立につなげています。この工房は地域社会に向けて医療や教育などの支援プログラムも展開し、積極的な社会貢献活動に感銘を受けました。

次に訪れた一般社団法人クマエ(Kumae)は、危険な労働環境で働く女性たちを雇用し、バナナペーパーの製造などを通じて、女性たちの新しい未来を切り開いています。本校では総合的な「探究の時間」の一環として、身近な問題を解決し、社会貢献する取り組みが行われています。そのため、今回の訪問は、生徒たちの関心も一段と高く、現地で活躍する日本人の方の生き方や取り組みに、興味深く聴き入っていました。生徒たちの1つ1つの質問に対して代表の山勢氏が丁寧に答えてくださったことで、自身の探究学習のヒントなども得ることができました。

山勢氏はごみ山で働くカンボジア人だけでなく、日本の若者も支援したいという思いでこの事業を始めました。「選択肢が多いはずなのに選び取れない人たちに選び取る力を育みたい」と語った山勢氏。両国生たちはどう感じながら聞いたでしょうか。自分は選択肢が多い、と思ったでしょうか。選択肢に気づけることも実は能力の一部です。

異国で活躍する日本人お二人の社会的な取り組みに触れ、生徒たちは異なる環境での社会貢献の意義を理解し、国際的な視野を広げる大切な機会となりました。

このスタディツアーに参加する機会を得た人たちは、その「気づきの芽」も得たはず。それをどう花咲かせるかは自分次第です。

 

 

写真(6)

現地での最後の日に、平和教育の一環として、キリングフィールドや戦争博物館を訪れました。これまで姉妹校との交流や歴史的な遺跡の見学を通じて、平和とのどかさを感じてきたなかで、この日は20年前までこの地で繰り広げられていた内戦の事実に直面することとなりました。 

現地で5日間同行してくれたガイド、サンバンさんからは、内戦によって200万人以上が犠牲になったという衝撃的な事実や、お兄さんが地雷で亡くなった悲劇が伝えられました。これは一つの国で人が人を殺すという残忍な事実、戦争の深刻さを生徒たちに必死に伝えるものでした。サンバンさんの人生をかけた、「伝えたい」という語りは両国生に染み入りました。時には受け止めた想いの大きさや、現実の過酷さに涙を流す生徒もいました。戦争が現実味を帯びてしまった今、戦争の現実を知り、止めたいと思う大人がどれだけいるかが、平和な世界の鍵を握ります。どうかこの経験を、切実なサンバンさんの想いを、忘れないでいてほしいです。

カンボジアは内戦により国土が荒廃し、社会的な混乱が続くとともに歴史的背景から発展途上国となりました。現在もなお内戦からの復興を目指している中で、姉妹校の生徒たちや、カンボジアの人々が、この国の歴史的な困難を乗り越えようとし、明るい未来に向けて希望を抱き、前向きに生きていこうとしている姿があります。生徒はこの国と人々の姿に深い感銘を受けたことでしょう。そして、この貴重な訪問を通じて、生徒たちは、過去の歴史から学び、将来に向けて平和の大切さを広める使命を感じ、自らの立場からできることを積極的に模索し、平和の橋渡しとなる存在になることでしょう。

 

 

写真(7)

上記の他にも、ナイトマーケットでの買い物やトゥクトゥクの利用、美味しい現地料理を楽しみながら、異なる文化に触れることができました。6日間の行程を通じて、発展途上国のカンボジアで、各自が見つけた価値あるもの・感動・気づきが、今後の生き方、進路選択、成長につながり、さらなる発展を遂げていくことを期待しています。

 

 

写真(8)

最後に、本校は将来において国際的な舞台で活躍するリーダーを育成することを使命としています。中学3年生のアメリカユタ州でのスタディツアー、高校でのカンボジアでのスタディツアーの経験が生徒たちにとって、将来、欧米・アジア諸国と連携して、日本だけにとどまらず、グローバルな視点で世界の平和や経済の発展、社会貢献に寄与できるような力を養い、世界を広い視野で見つめる力を身につける契機となることを願っています。

 

1月20日(土)13:20より1階視聴覚室で、参加者たちが得た感想や学びを共有する報告会が開催されます。是非ともご参加いただき、異文化での学びが詰まった報告会とレポートにご期待ください。