校章

東京都立久留米西高等学校

58粒目:名前についてのもう一つの話

2021/12/06

 57粒目では私が生徒にもらった「板」のエピソードから「クラス・番号・氏名を正しく書く」ことを生徒に徹底していた話をしました。

 初対面のクラスでは1学期の初めの授業で話す話がもう一つあります。私の中では「ワンセット」なので、前回に引き続き今回はその話をしようと思います。

 私の名前は「なかむらひろし」です。父は「ひろお」、母は「ひろこ」です。嘘ではありません。本当の話です。おそらくお互いに名前で相手を選んだわけではないでしょうから、ずいぶんな偶然ですよね。中村家は私の他に弟が一人の4人家族です。さて弟の名前は何か想像してみてください。

 「ひろゆき」です。幸い4人とも実在しています。

 「中村」は実によくある苗字で、私が生まれる前の歌謡曲に「お~い、中村くん」という曲があり、よくからかわれました。それに輪をかけてよくある名前の「ひろし」。子供の頃は「星飛雄馬」なんて名前に憧れました。さらに追い打ちをかけるように少年サンデーに連載されていた漫画の中に「どこにでもいるありふれた名前の男」として「なかむらひろし」が登場してあっという間にやられて消えていくのを読んで、若い頃は自分の名前が嫌で仕方ありませんでした。

 家庭内も大変です。母が何を考えたか、歯ブラシに一人ひとりのイニシャルを書いたことがありました。ネタではありません。実話です。同じイニシャルの書かれた歯ブラシが4本並んでいる様子を想像してみてください。子供心に唖然としたのを覚えています。幸い歯ブラシの柄の色が違ったので、見分けはつきました。

 自分の名前を誇れないまま生きていた私に、38歳の時に転機が訪れました。

 私の親類縁者で唯一東北地方で暮らしていた叔父が病気で亡くなり、その葬儀のために初めてその地を訪れた時でした。住んでいる土地によって葬儀に特徴がある場合があります。その土地には亡くなった後すぐに荼毘にふして、その後にお骨で葬儀をするという習慣がありました。叔父の家族以外にゆかりのない土地だったこともあり、その土地の世話役の方に葬儀の一切の取り仕切りをお願いしました。30人以上の参列者が故人との血縁関係等の序列に従って役割分担を与えられる習慣があるとのことでした。通夜の前に世話役の方に父と弟と私の3人で挨拶に行った時のことです。世話役の方が父にしきりに確認します。

「中村さん、もう一度確認しますが、ひろしさんが長男で、ひろゆきさんが次男で間違いないですね。」どうも長男と次男では序列に差が出るようです。

 あまりにも何度も確認するので、何が確認したいのか意図が分からず父が世話役さんに尋ね返します。すると世話役の方がこう言います。

 「普通は長男がお父さんの字をもらうもんじゃないんですか?」

 父はこう返しました。

 「確かにそうかも知れません。でも長男が生まれた時は急に生まれることになって家内が病院に運び込まれたんだそうです。当時は会社に連絡がきても私に伝える方法がなかったので、病院に駆けつけた時には既に生まれていました。無事に生まれた子供の顔を見て安心と家内への感謝の気持ちから家内の字を付けました。」

 38歳にして、初めて知った「中村弘志」の名前の由来でした。考えてみたら聞いてみたことがありませんでしたから。

 中村家4人家族は父が「寛男」、母が「弘子」、弟が「寛之」です。

 兄弟の「ひろ」の字がクロスしていることの理由を何も想像したことがありませんでした。

 私にとって「自分の名前の由来をしっかり認識することを怠っていたこと」は小さな後悔の一つです。

 くるにしメンバーの皆さんの名前にも誰かの想いや由来があるかも知れませんね。知っておくことは悪いことじゃないと思います。そしてその名前を正確に書くということはぜひ徹底してほしいと思います。

 今日で期末考査2日目が終了しました。まだ2日間考査があります。「なりうる最高の自分」になるために、できることをしっかり準備して、考査を通じて先生と心のキャッチボールをしてくださいね。

 ①今朝は天気が悪く田無タワーがかすんでいました。気温が上がらず初めてジャンパーを着て正門に立ちました。今日は一日中寒かったですね。

 ②今日のおはようカウンターは230回です。いつも立ち話をする散歩中の男性から「校長先生と会話すると朝から頭が活性化されるんだよね」と言われました。お役に立ててうれしいです。この方との会話も正門に立つ時の私の「ルーティン」の一つになっています。

 211206田無タワー 211206おはようカウンター