校章

東京都立久留米西高等学校

27粒目:「ゴミ拾いをする理由」

2021/08/20

 今日の朝もゴミを拾いました。清富士通りで拾っていると26粒目で紹介した方とは違う男性が「いつもありがとうございます」と話しかけてくれました。

 その方は道に落ちているたばこの吸い殻が気になっているようで、御自身でも拾っているとのことでした。いずれにしてもたばこは落ち葉のように自然に落ちたものではありません。誰かが吸っていたその手から意図的に落としたものです。故意でなければ拾えばいいんです。自分の出した吸い殻がその後どうなっていくか、想像すれば自ずと行動が変わるはずだと思います。そう考えると「想像力の欠如」という言い方ができるかも知れません。

 

 私がゴミ拾いをするのにはいくつかきっかけがありました。

 

 最初に意識したのはやはりたばこの吸い殻でした。現在大学生の息子がまだやっと歩き始めたくらいの時期に散歩で近所の公園に行った時のことです。ふと目を離した隙に、手に吸い殻を持って、こちらを見て笑っています。次の瞬間その手を口に…。慌てて取り上げてしまい、息子がおびえて泣いてしまったということがありました。

 たばこの吸い殻に毒性の強い物質が複数含まれているということには誰も異議をさしはさむことはないでしょう。「たばこの吸い殻 有害」等で検索をかけると多くのサイトに説明があります。私自身がたばこを吸わないので想像するしかないのですが、これだけその有害性がクローズアップされている中でいわゆる「ポイ捨て」はどうにも理解できませんでした。ただ自分の息子に被害が及ぶ可能性があるとわかったことで、息子と散歩に行く時には周囲の吸い殻を拾うようになりました。「もし口に入れてしまったら」と想像して、後悔したくなかったからです。

 とはいえ、吸い殻拾いは私の本業ではありませんので、常に拾うようなことはしていませんでした。

 毎朝出勤時にゴミを拾うようになったのは、10年くらい前からでしょうか。それ以来くるにしで4校目。そのうち1校を除いた3校で拾っています。拾わなかった1校は最寄駅から学校まで自転車を使っていたからです。それ以外の学校はいずれも最寄駅から15分程度歩く学校だったので、気になった時に拾っていました。

 毎日拾うことを意識するようになったのは昨年度まで勤務していた学校からです。着任してから1ヶ月も経たない頃のことです。通学路沿いを歩いて出勤している時に、反対側から歩いてくる年配の女性が手をつないでいた子供に向かってこう言ったのです。

「ほんとうにゴミが多いね。どうせ〇〇高校の生徒だろう」

 おそらく私がその学校の関係者だとは知らないで思わず口にしたんだと思います。とても悔しかったのですが、言い返せませんでした。全部ではないにせよ、ウチの生徒が捨てているのも事実だったからです。それが証拠に学校内の自動販売機でしか売っていない食べ物の包装紙等のゴミも確かによく落ちていました。

 それ以来、前任校に勤務した5年間毎日拾うようにしました。いろいろ思うことはありましたが、まずは行動に移すことで何かが変わるかも知れないと思ったからです。くるにし同様、沿道にお住まいの方が次第に声をかけてくれるようになりました。「先生、ありがとう。」「今日はゴミ出しの日だから一緒に出しておくよ。いつもすまないねぇ」なんていう声もいただきました。地域の方にお願いした学校評価アンケートにも「副校長先生がいつもゴミを拾ってくれていて感謝しています」という手書きのコメントもいただきました。

 前任校では駅から学校まで一緒に歩く生徒も数名いたので、一緒に拾いながら歩いてくれる生徒がいた時もありました。これも楽しかった思い出です。

 去年のある日、いつものようにゴミを拾っていると後ろから声をかけられました。振り返るとすぐ近所の中学校の校長先生でした。その校長先生にゴミ拾いをする理由を尋ねられました。今までの経験等から想像して、自問自答してみました。今は素直に言えます。

 

 ゴミが落ちている通学路を子供たちに歩かせて、道路にゴミが落ちていることが当たり前で気にならない子供になってほしくないから

 

 その校長先生は、御自身の中学校の職員の全体打ち合わせで、私のゴミ拾いのことを話題にしたと、後に話してくださいました。

 清瀬駅からの「ふれあいどーり」も「清富士通り」も小学生が歩いています。ランドセルを背負った小学生にできるだけゴミが散乱している様子を見せないで済むように、ゴミ拾いを続けようと思います。

 くるにしメンバーには年齢相応の想像する力を使って、「どうせ、くるにしの生徒だろ」と言われないような、様々な場面に通用する「くるにしのプライド」を持ってほしいと思います。

 良きにつけ悪しきにつけ、必ず誰かが見ています。

 

①今朝の田無タワー方面は青空でした。

②都営住宅の植え込みの背の高い雑草の裏に3つもセミの抜け殻がついていました。たくましく生きているんだなあと感じます。セミは地上に出てからの寿命は短いと聞きます。精一杯生きてほしいと思います。

 210820田無タワー 210820セミの抜け殻①