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東京都立若葉総合高等学校

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2023/03/10 行事・進路

2022年度:卒業式(答辞)

 

(2023.03.10更新)

 

第16回卒業証書授与式での答辞の様子を掲載します。

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第16回:卒業式映像(答辞)

 

 

第16回:答辞全文

陽の光が日一日と温かさを増し、軽やかに吹く風に春の訪れを感じる今日この日に私たち222名は晴れて卒業の時を迎えられましたこと、大変嬉しく思います。皆様ありがとうございます。

さて、この卒業式の答辞のお話を受けた時、私は正直、困ってしまいました。なぜなら、3年間を振り返ってみて特別語りたい楽しい思い出や、毎日学校に通うことが出来て幸せだった、という感想をどうしても持てなかったからです。卒業式の答辞といえば、学校生活の思い出や、先生、保護者の方への感謝、「辛いこともあったけれど、仲間がいたから乗り越えることが出来た。この学校で学んだことを胸に、夢に向かって努力していきたい。」という内容が一般的です。しかし、私は学校が好きではありませんでした。とても窮屈に感じていました。人間は誰一人として同じ人はいないのに、どうして同じ時間に同じ様に机を並べて、同じ教科書を開かなくてはいけないのだろう。どうして全員同じ制服を着なければいけないのだろう。なぜ髪の毛を染めてはいけないのだろう。高校生らしくってどういう意味だろう。そもそも学校は何のためにあって、必ずしも行かなければならないところなのだろうか。そんな止めどなく湧いてくる疑問とその当たり前に飲み込まれていく自分に違和感を抱きながら過ごしていました。そんな私が卒業式で本心から話せることなどない。もっと高校生活を思いっきり楽しめた人が読んだ方がいい!そう思い、H先生とK先生にお断りしようと相談に行きました。すると、「今のその話を聞けてよかった。そのまま文章にしてくれたら良い。そのままお願いします。」というお返事を頂きました。そのため私はこの答辞を「3年間を清算し、自分と正面から向き合う機会」と捉えて読ませていただくことにしました。

答辞を書くということは私にとって大掃除のようでした。一見綺麗に整ってみえる部屋も片付けを始めた途端、今まで無理やり押し込んできたモノと嫌でも対面することになり、部屋中にモノが溢れかえります。私はこれまで人からどう見られるか、OKをもらえるかを自分の判断基準にしていました。その結果、自分の本音が聞こえなくなっていました。「〜しなければならない、すべきだ」という声に「〜したい」という気持ちが埋もれていたのです。そこで私はまず、自分の幸せのために生きたいと思いました。

そもそも「幸せ」の定義はとても曖昧です。あなたにとっての幸せと私にとっての幸せはきっと違う。そんな当たり前のことに私はこれまでずっと気が付きませんでした。いい大学に進学し、いい会社に就職してお金を稼ぎ、結婚をして家庭を持つ。定年退職後は穏やかな余生を過ごす。そんな王道幸せプランを自分の人生に当てはめようとしていました。しかし、私は今まで聞いたことのある職業でやりたい仕事はなく、企業や組織の従業員となって、自分の心に嘘をついてまでお金の為に働きたくはありませんでした。進学を考えていましたが、10校計15回以上のオープンキャンパスに参加して、今どうしても自分が入りたいと思う学校はありませんでした。高校を卒業したら進学か就職か二つに一つを選ばなければならないのに、自分はどちらに進むこともできない。早速みんなの行くレールから外れてしまったようで、自分は間違っているのではないか、不安と恐れでいっぱいになりました。勝手に進路希望調査や進路面談の度に「あなたの進む道をいつまでに決定しなさい」と急かされるような気持ちになって焦りました。それでもみんなが進学するから、私も進学する、という決め方だけは違う。自分が胸を張って「やりたい!」と言えるものを、高校卒業までに、いえ、それ以上に時間はかかるかもしれないけれど、探していこうと決めました。

このような考えが私の中で核心に迫る体験をすることができました。高校3年生の9月。私は長野県へ2泊3日のひとり旅に行きました。一言で言うと「なんだ。今まで自分が生きてきた世界だけがこの世の全てではなかった!もっといろんな生き方があっていいんだ!」と大衝撃を受けた旅でした。電車の切符と宿のみを決め、その他のことは全く計画せずに現地に向かい、その行程の中で出会った多様な価値観を持った方々と、自分のこと、人生のこと、さらには夢を語り合いました。未熟で未経験なことばかりの今だけれども、一歩踏み出せば世界は広く、この感性で色々なことを吸収して咀嚼していける無限の可能性を秘めているのだと、力強く背中を押してもらいました。

私は4月から、その時に出会った方のもとでインターンとして経験を積むことにしました。進学や就職とは違う道ですが、自分自身の喜びを私一人だけのものにするのではなく、行く先々で出会った方々とその喜びをシェアしていく。私はそんな人生を生きていきたいと強く思っています。しかし、今の段階ではまだ、周りの人にシェアできる自分の喜びや強みが何なのか分かっていません。自分はどんな価値のあるものを生み出せるのか。今まで出会ったすべての人からもらったもの、また経験を自分の中でどう転換して、これから出会う人々にどう還元していけるのか。明日からの新しい旅を通して見出します。

私はこの3年間を若葉総合高等学校で過ごすことができて本当に良かった。今、この瞬間、心からそう思います。沢山悩んだことも、迷ったことも、葛藤したことも、何度も目的地を変更したことも、全てを総括して私にとってなくてはならないトライアンドエラーの学びの時間でした。

こうして答辞を読む機会を与えてくださった学年の先生方、熱く長い打ち合わせを何度も繰り返しながら一緒につくり上げてくださったH先生、K先生。3年間で一番濃く楽しい時間でした。ありがとございます。

最後になりますが、コロナ禍でありながら私達のためにひと肌もふた肌も脱いで、色あせることのない青春の思い出を作らせてくださった先生方、演劇部の最高の仲間たち、共に3年間を過ごしてくれた16期の皆さん、18年間沢山の愛を注ぎ続け育ててくれたお母さん。本当にありがとうございました。

さあ!いよいよ巣立ちの時がやってきました。これまで守り導いてもらってきた私たちですが、これからは自分の意志で道を切り拓き、自分の足で、自分の人生を歩んでゆきます。どうぞ温かく見守っていてください。よろしくお願いします。

今後の東京都立若葉総合高等学校の益々のご発展を祈念し、答辞と致します。

令和五年三月八日 卒業生代表