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    • 卒業生による講演会 第7回

      「石油会社のもとに半世紀」

      8MA 樋口 豊
      (H26.3.12)

        1859年、米国で機械掘りによる油井採掘に成功して近代石油産業が始まります。最初、石油はランプ用の灯油として使われましたが、一緒に採掘されるガソリン留分は、爆発的な燃焼を伴うので、川に捨てられて火災などを起こし、くず以下の厄介ものでした。
       1886年、ドイツのダイムラーとベンツがほぼ同時に発明した自動車によって、捨てられていた厄介者がエンジンの燃料として、最も価値のあるものになりました。以来、石油は人類が手に入れた最高のエネルギーとして、単に燃料にとどまらず化学原料としても有用で、人間の現代生活は石油なしでは成り立たないほどに利用されています。
       石油を大量に安く供給する為に、石油の探査、採掘、海底油田開発、原油の回収技術、原油の貯蔵、タンカー、石油精製などで様々な技術革新がありました。在校生の若いエンジニアの皆さんに、ほんのその一端ですが、お話をしてみました。

      (1)石油の探査
      ・地質探査―石油を含む地層は6億年~6千万年前で、中生代(アンモナイトや恐竜が繁栄)が多く、地層中に含まれている古生物を調べて地質年代を測定します。
      ・人工衛星による資源探査―資源探査観測衛星のレーダーで地表の画像を解析。
      ・物理探査(原理は医療の超音波検診と似ている)―地震探査では人工地震を起こし、その地震波を地下に送り、反射して戻って来た反射波のエコーをコンピュター処理し、地下の三次元断面図を作ることが出来る。その他重力探査、磁力(地磁気)、超音波探査などがある。
      (2)石油の採掘―回転式ロータリー掘削機が使われ、ビット(掘削具)が磨滅すると取り替えなければならないが、1万mの掘削では1本10mのパイプ を1,000本もつなぎはなしをしなければならないので、容易ではない。
      (3)海底油田開発―陸上の石油開発の余地がなくなり、東京タワー(333m)より深い海域で油田を掘削し、プラットフォーム(原油の積み出し基地)が設置されている。更に2,000mを超す大水深域での油田掘削もしています。
      (4)原油の回収技術―原油の自噴やポンプでの汲み上げの回収は20~30%です。地下に水やガスを押し込む方法で30~40%まで、更に水蒸気や界面活性剤を圧入して油の粘性を下げる方法などで40~50%まで回収出来ます。
      (5)原油の備蓄―日本の石油使用量は1日60万KL(東京ドームの約半分)。国家備蓄が100日分、民間備蓄が70日分で、計170日分を全国14ヶ所で備蓄。
      (6)タンカー、中東から日本まで1万2千kmあり、20万トン級タンカー(これが主体)でマラッカ海峡を通って20日程かかる。日本で一番大きなタンカーは48万トンですが、海の浅いマラッカ海峡を通れないため、ロンボック海峡へ回り道をします。
      (7)石油精製―原油は350℃に加熱されて、蒸留塔に送られる。塔の中は約30段の棚段があり、加熱された原油が沸点の違いによって、ガソリン、灯油、軽油に分留される。350℃で蒸留出来ない重油は「接触分解装置」(触媒のゼオライトに接触させて重油を低分子に分解させる)でガソリン、灯・軽油を造ります

       私は1962年外資系の石油会社に入社し、潤滑油のセールス・エンジニアとして47年間勤務しました。その仕事は、「機械メーカーとの潤滑油の技術折衝」、「石油製品を納入している顧客への技術支援」、「代理店への技術支援と技術教育」が主な役割でした。
      (1)機械メーカーとの技術折衝―適油推薦を頂くことや機械の高性能化に伴う高性能潤滑油の開発など、またその為の実機テストなどがありました。
      (2)顧客への技術支援―「顧客の生産性向上とコスト低減」へのお手伝いで、その為に適性潤滑油や高性能油の検討で生産性を上げ、また保全費の低減を図る技術支援が目的でした。(在校生には、私が力を入れていたアルミニウムやステンレスの圧延油で、その性能によってつぶす割合を大きく出来たり、圧延速度を上げる事で増産が出来た事をお話しました)
      こうした潤滑油セールス・エンジニアの役割も、機械メーカーの永年の技術の蓄積、各工場の保全体制の確立、そして石油会社の合併と合理化で、残念ながら往時の勢いもなくなり、各社とも体制が縮小されているのが現状です。
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      石油の歴史についてご興味のある方は、下記の切手で綴った作品をご高覧賜れば幸いです。
      「石油150年の歴史」http://blog.goo.ne.jp/higuchi-stamp
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