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東京都立大島海洋国際高等学校 全日制

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2025/10/31 トピックス

【海洋生物系】下船式~10日間の実習を終えて~

10月20日(月)から10月29日(水)まで、海洋生物系の乗船実習を行いました。今回の乗船実習は、単なる「きれいな海を見て楽しかった」という体験にとどまらず、生徒たちにとって非常に貴重な学びの場となりました。10日間の実習を通じて、生徒たちは仲間との絆を深め、協力しながらさまざまな課題に取り組み、多くの経験を積み重ねました。この経験は、今後の進路選択において大きな財産となり、海洋に対する真摯な姿勢や、協力・責任感といった重要な価値観を育む貴重な機会となりました。

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実習では、小笠原で底釣りを行った後、大島に戻る途中で海洋調査を実施しました。調査の一環として、ニューストンネットを使って海洋表層のプランクトンを採取しました。採取したプランクトンは、ルーペや顕微鏡を使って観察しました。その中には青く輝くプランクトンも見られ、普段見ることのない珍しい種類や形をしたプランクトンも存在していました。

また、大島へ向かう往路と同様に、航海当直を行いました。前線の通過の影響で、海は荒れ、進むたびに船は上下に揺れ、ときには横揺れも感じました。海の素晴らしさを感じる一方で、その厳しさを身をもって知ることができました。そんな中でも、仲間同士で支え合いながら、協力して乗り越え、実習を続けることの大切さを実感しました。

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10日間にわたる実習でお世話になった大島丸の船内清掃を行いました。生徒たちは、自分の居室や学習、食事を共にした教室などを分担し、隅々まで丁寧に掃除をしました。清掃の際に大切にしたのは、「飛ぶ鳥跡を濁さず」という精神です。使い始めた時よりもさらにきれいにして次の実習に引き継ぐことで、大島丸は常に清潔な状態が保たれています。

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10月29日に下船式を行いました。乗船実習担当の副校長は、「皆さんがこの10日間でどれだけ成長したか、そして共に支え合いながら乗り越えた経験が、これからの人生にどれほど大きな影響を与えるか」と話して、「この10日間で得た学びや経験は、皆さんの高校生活、進路選択、そして将来のフィールドワークへと繋がっていきます。この経験を無駄にせず、日々の目標を持ち続け、さらに成長していってください。」と伝えました。生徒代表の挨拶では、船員の方々、指導教官、仲間、家族、そして寄港地でお世話になった方々に対して、深い感謝の気持ちを表していました。全ての支えに感謝し、この実習で得た経験を今後に活かしていく決意を述べていました。

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生徒たちは、下船後、船員の方々に向けて「行ってきます!」と元気に挨拶をしました。その後、船を離れる際には、船員とのお別れが名残惜しく感じられました。お世話になった船員の方々に手を振りながらも、心の中では「また戻ってくるよ」と思い、実習の締めくくりとして、温かい気持ちを胸に船を後にしました。

以下は、大島丸から届くデイリーレポートです。

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以下の生徒の感想にもある通り、漁業や環境保護についての学びを深め、将来的に自分が関わるべき分野として真剣に考えるようになったことが印象的でした。

生徒の感想~一部抜粋~

〇実習が始まる前は、小笠原や底釣り実習など楽しみなことももちろんありましたが、それ以上に不安のほうが大きかったことをよく覚えています。正直、このメンバーで10日間やっていける自信はありませんでした。しかし、いざ乗船が始まると、思っていた以上にみんなが協力できていて、乗船前に感じていた不安は少しずつ小さくなっていきました。

〇今回の実習で「自分は成長したな」と思えた一番の部分は、生物系のみんなときちんとコミュニケーションを取れるようになったことです。乗船中は、普段あまり関わりのない人たちとも話すことができました。これは、社会に出たあとにも必ず役に立つことだと思います。正直、乗船前の生物系は、あまり全体での会話がなく、仲の良い人だけで固まって行動している状態でした。でも、今回の乗船で初めてしっかり話した人もいて、その人の印象がガラッと変わったり、「こういう考え方をする人なんだ」と知ることができたりして、乗船して本当によかったと感じました。

〇漁協では、組合員のみなさんが力を合わせて、環境や資源量を第一に考えながら漁業をしていることを学びました。お話を伺って、漁業は「漁師さんが魚を獲るだけ」ではないと知りました。漁獲後の運搬、計測、管理など、いろいろな人の役割がつながって成り立っていることを知り、今後の進路はもっと幅広く考えていきたいと思いました。

〇大島と父島という「島どうし」で比べても、場所が変わるだけで全く違う生き物を見ることができました。例えば、沈められた構造物(バラ沈)のような人工物をすみかにしている魚や、別の種類の魚と共生して生活している魚など、さまざまな生き物の姿を実際に目で見て、生物の多様性を強く実感しました。

〇ダイビングでは、きれいな海の中に、海底へ沈んだプラスチックごみが残っている様子も見ました。また、漁協では、密漁の際に使われた漁具を回収するような取り組みも聞きました。「きれいな小笠原」にも、実はたくさんの課題があることを知りました。自分も「自分には関係ない」と思わず、募金やごみ拾い、周りの人に伝えることなど、自分にできることから行動していくべきだと感じました。

〇生活面では、これまで寮(ドミ)や学校生活の中で、あまり「5分前行動」を意識せず、時間ぎりぎりに動くことが多かったと思います。これからは、時間にもきちんと気を配りながら行動していこうと考えています。

〇帰路では海況が悪く、ほとんどの人が船酔いしました。自分も含め、船酔いや得手不得手のせいで、思うように動けない場面がありました。そういうときに助けてくれたのが、生物系の仲間でした。人にはそれぞれ苦手なことや失敗する場面が必ずあると思います。でも、そのときにお互いを支え合える関係があれば前に進める、と強く感じました。

この乗船実習での学びは、生徒たちの将来の進路選択に大きな影響を与え、より広い視野で自分のキャリアを考える貴重なきっかけとなりました。「この実習を通じて進路の幅を広げたい」「自分もその一員として責任を持ちたい」といった声が自然に上がったことは、この実習が単なる体験にとどまらず、専門教育の一環として極めて価値のあるものであったことを証明しています。まさに、本校が掲げる「海に学び、未来を拓く。」という教育目標を具現化する瞬間であり、生徒一人ひとりが「海に係る分野で働く人間」として、確かな一歩を踏み出した証と言えるでしょう。

最後に、この貴重な経験を提供してくださったすべての関係者の皆様に心より感謝申し上げます。特に、大島丸の船員の皆様、寄港地でご指導いただいた皆様に深く感謝いたします。