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2025/06/25 トピックス
【1年生⑩】4次基礎乗船実習 ~ 5日間を振り返り ~
「基礎航海実習」の第4次実習が、令和7年6月16日から20日にかけて実施されました。実習船「大島丸」に16名の生徒が乗船し、5日間にわたる洋上での生活と実習に取り組みました。この実習は、海洋に関する基礎的な知識や技能の習得のみならず、集団生活を通じた協調性や責任感の醸成、さらには将来の進路や適性について深く考える貴重な機会となります。
1日目の午後に伊豆大島・岡田港を出港しました。大島丸は、岸壁からゆっくりと距離が開いていくその瞬間、大きな汽笛が響き、船上では指導教官の合図で帽子を取り、港に向かって敬礼。さらに見送りに来た島の人々へ、感謝と決意の気持ちを込めて帽子を振りました。ある生徒は「いよいよ始まるという実感が湧いてきた」と話し、また別の生徒は「昨日までの不安が、海に出たことで前向きな緊張に変わった」と語っていました。港を離れた大島丸は、館山沖へ向けて静かに航路を進み始めました。
2日目以降は、館山沖や浦賀水道、東京湾を航行しました。生徒たちは洋上での実習を通じて、ロープワーク(基本的な結び方を繰り返し練習)、操舵訓練では、実際に舵を取り、船の動きを自身で操作する体験から、「責任の重さと達成感」を学びました。
実習中、指導船員のサポートのもと、一人ずつ操舵席に立ち、進路を維持しながら船を操作するという、生徒にとって緊張感の高い実習となりました。はじめは「少し動かすだけで船が反応してしまい、思った通りに進めなかった」と戸惑う声もありましたが、少しずつコツをつかみ、集中力で操船に挑む姿が見られるようになりました。
生徒たちは大島丸のブリッジにて、航海士から「海図の読み方」についての説明を受けました。ブリッジ中央のチャート台には、航行予定の海域が詳細に記された紙の海図が広げられ、そこには水深、航路標識、危険区域など、地上の地図とは異なる情報が緻密に描かれています。初めて間近に見る“海の地図”に、生徒たちは興味深く目を凝らしていました。
機関室にて、機関長から船のエンジンや機関設備に関する説明を受けました。普段は立ち入る機会の少ない機関室に足を踏み入れた生徒たちは、まずその熱気と重厚な機械音に驚いた様子でした。
機関長からは、ディーゼルエンジンの仕組み、プロペラとの連動、冷却や排気のシステム、発電機や油圧装置の働きなど、船を動かす根幹を担う各装置について、実際の機器を前にしながら具体的な説明が行われました。
生徒たちは、船内での実習や講義を重ねるうちに、次第に船内生活にも適応していきました。「初めての船内生活は時間に追われて大変だったが、仲間と振り返りを重ねるうちに、余裕を持って行動できるようになった」と語っており、規律ある生活が生徒たちの成長を支えている様子がうかがえました。
【実習最終日】下船式と生徒の振り返り
最終日には船内の清掃を行い、5日間の実習の総まとめとして下船式が行われました。本校の乗船実習担当副校長からは、「教官や船員の方々からは、実習中の皆さんの様子について、「声を掛け合い、協力しながら取り組んでいた」「一人ひとりが真剣に課題に向き合っていた」との報告がありました。集団としての動きにまだぎこちなさはあるものの、前向きな姿勢で初めての実習に臨んでいたことが印象的だったとのことです。出航式でお伝えした「協力」と「助け合い」の大切さを、実習を通して実感する場面も多かったのではないでしょうか。仲間と支え合いながら乗り越えた経験は、これからの学校生活や2年次の実習、さらには将来の進路にもつながっていくはずです。」などのの激励の言葉がありました。
(写真↓:下船式後、生徒たちが船員の方々に感謝の気持ちを込めて自主的に1列に並び、挨拶を行いました。」)
【生徒の声】
実習後には、参加した生徒から多くの感想が寄せられました。一部をご紹介します。
「最初は船内生活に戸惑い、仲間と上手く連携できずに苦労しましたが、振り返りを通じて改善し、最後にはチームとして機能するようになりました。協力の大切さと難しさを実感しました。」
「協力するつもりでも実際はできていなかったり、周囲を見て行動することの難しさを感じました。この実習での反省を、これからの学校生活で活かしていきたいです。」
「声掛け、気遣い、支え合い――この三つの“協力”を通じて、人と人との関係性の大切さを学びました。学んだことを忘れず、これからの3年間に活かしたいです。」
(写真↑↓は、横浜の寄港地活動で、横浜みなと博物館で帆船日本丸の見学中の様子)
今回の第4次実習をもちまして、令和7年度の1年生基礎航海実習は全て終了しました。生徒たちは、限られた空間での共同生活や洋上での船員の方々の支援を受けながら、実務的な体験などを通じて貴重な学びを得ることができました。この経験が、今後の進路選択や専門的な学びへの確かな土台となることを期待しています。
今後も本校では、実践的な教育を通じて「海から学ぶ力」を育んでまいります。