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東京都立南多摩中等教育学校

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2026/03/16 南多摩トピック

「知名度」の先に見つけたもの。 5年生 進路学習「地方大学の魅力発見Pitchトーク」実施報告

 「有名な大学なら安心」「都市部の方が成長できる」――高校生の進路選択を長く支配してきたのは、知名度や偏差値という画一的なものさしでした。しかし、そのフィルターだけで一生を左右する学びの場を本当に選び取れるのでしょうか?
 本校12期生たちは、その問いに真正面から向き合いました。全国に点在する地方大学の知られざる魅力を掘り起こし、90秒のPitchトークで聴衆の心を掴む。この挑戦を通じて、生徒たちは知名度に代わる新しいものさしを自らの手でつくり上げていきました。

 

● 地域が研究を尖らせる

 生徒たちが最も強く心を動かされたのは、「その土地だからこそ成り立つ研究」の存在でした。
 城下町の風情が残る福島県会津若松市で進む「ITによる地域課題解決」。琵琶湖のイメージだけにとどまらない、データサイエンスや先端研究の拠点としての滋賀大学。防災、環境保護、情報技術――リアルな社会課題が、土地の風土や歴史と密接に結びついている。その発見は、生徒たちの地方観を根底から揺さぶりました。
 「大学の研究は地域の特徴と関係している」と答えた生徒は、学習前の71%から87.3%へ増加。立地は「不便さ」ではなく、研究の独自性を研ぎ澄ませる唯一無二のフィールドだったのです。

 

● 90秒が鍛えた「捨てる勇気」と「聴く力」

 90秒という極限の制約は、生徒たちに問いを突きつけました。「何を伝えるか」以上に、「何を捨てるか」。

 聞き手の耳を一瞬で開かせるパワーワードの選定、核心だけを届けるための情報の取捨選択。それは単なるプレゼン技術の習得ではなく、「相手の立場から考える」という深い対人洞察のプロセスでした。

 さらに印象的だったのは、「聞き手がどんな態度で"場"を用意できるかも、Pitchのクオリティーを左右する」という気づきです。伝えることは一方通行ではない。話し手と聞き手が共につくる空間の質にまで目を向けたその視点は、コミュニケーションの本質に触れるものでした。

 

● 技術を超えた「体温」が人を動かす

学習の終盤、生徒たちがたどり着いたのは、スキルや論理のさらに奥にあるもの――熱量の力でした。

 「自分が広報担当だったら」という当事者意識で大学を徹底的に調べるうちに、情報の向こう側にある人の想いに心が重なっていく。どんなに洗練された話術よりも、自分自身がその大学の価値を心から信じているという「体温」こそが、相手の心を動かすのだと実感したのです。

 

「技術ではなく熱意の方が重要であると感じた」

「自分が誰かの心を動かそうとした時には、まず自分がそれに心を動かされないといけない」

 

 この気づきは、進路選択にとどまらず、これからの人生のあらゆる場面で生徒たちを支える羅針盤になるはずです。

 

 知名度の高い大学を選ぶことが悪いのではありません。大切なのは、「それしか知らないから選ぶ」のと、全国の尖った魅力を知り尽くした上で「自分の目的に合うから選ぶ」のとでは、その後の4年間の濃度が決定的に違うということです。

 この学習を経た12期生たちは、かつての単色なものさしを手放し、多角的で豊かな視点を手にしました。新しいものさしで未来を選ぶ生徒たちを、これからも応援していきます。

                                             進路部

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