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本校では、異なる時代や文化、言語を通じて「知の世界」に触れる機会として、毎年「異文化理解講演会」を実施しています。今年度も、能楽師の安田登先生と琵琶奏者の金沢さんをお招きし、5学年生徒を対象に講演会を行いました。
講演は、AIのシンギュラリティ(技術的特異点)からスタートし、世界中の言語、古典、神話、哲学へと話が広がっていく展開。いったんバラバラに見えたトピックが、やがて深いところでつながりを持ち、思考が解きほぐされていくような時間となりました。
実演では、安田先生の能の謡と琵琶による『平家物語』の語りに、生徒たちは圧倒され、物語の世界に引き込まれていきます。また、シュメール語を琵琶に合わせて謡うという貴重な場面もあり、古典と音の力が融合するその瞬間に、教室の空気が静かに変わっていくのが感じられました。
講演の後半では、古代ギリシャ語やヘブライ語のテキストを「インターリニア(対訳・逐語訳)方式」で読み解くワークにも挑戦。難解に思われがちな古典の言語も、声に出して読むうちにその人間的な手触りや、ユーモアに満ちた感性が伝わってきます。
講演を受けた生徒からは、次のような感想が寄せられました。
「世界中の古典という斬新な切り口から、現代社会における生き方を考える視点を得ることができました。人間は、どんな時代にも似た感覚を持ち、ユーモアにあふれていたことに驚かされました。」
「古代ギリシャ語の解読体験が特に印象に残りました。地理学や言語学といった学問のつながりの面白さを実感し、世界史を学ぶモチベーションがさらに高まりました。」
「「 『絶句』が漢文の世界に興味を持つきっかけでした。今回の講演で、文字や言葉が想像力を深く刺激することを再認識しました。学ぶ意欲をかき立てられた2時間でした。」
こうした生徒の声からも、講演が単なる知識の伝達ではなく、「異文化」を通じて自分自身の問いと向き合う時間になったことがうかがえます。
進路部では、「異文化」とは単に国境を超えることだけでなく、時代や言語、文化や価値観の違いを越えて、知と知、人と人をつなげていくことだと考えています。今回の講演会を通じて、生徒たちがそうした視点を得て、自らの探究を深める力を育んでくれたことを願っています。