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7月13日(木)、5年生を対象とした異文化理解講座が開催されました。「異文化」と聞くと、「海外」を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。視野を広げてみれば、私たちの身近にも「異文化」はあります。また、過去や未来も、現代に生きる私たちにとっては「異文化」です。
今回は、国内外で活躍する能楽師であり情報ネットワークの専門家でもある安田登さんに「古典から考える未来~大きな時代の変化の中で~」というテーマで講演をしていただきました。甲骨文字の読み解きから、世界史、日本史、数学、古文、哲学と様々に展開される2時間の講義に生徒たちは夢中になり、古典から未来のつながりの中における「心」の在り方について思いを巡らせました。講演の中盤には、日本の伝統楽器である琵琶と笙の奏者が加わって、能の上演もありました。それまでの講演の様子とはうってかわって、能楽師としての安田先生の張りつめた空気と謡の臨場感に、生徒たちは一瞬にして心を奪われていました。
《講座の内容》
1)シンギュラリティについて
2)甲骨文字から読み解く「心」の前の時代
3)夏目漱石の生きた「あわい」の時代 …能「夢十夜(第三夜)」上演
4)「身体にあった心」 …楔形文字(シュメール語)、イーリアス
5)情動と感情 …新約聖書、「あはれ」
6)ChatGPT、Apple Vision Proなどから考える次の時代
《生徒の感想》
◎本日の異文化理解講座の感想
「シンギュラリティが何なのか理解できた。そういった人間社会の技術や言語に関わることが、指数関数や微分などといった数学と関連していて、学問のつながりを感じた。世界史や日本史は好きだけれど、それを自分たちが知ってどんなことに生かせるのか漠然としたイメージしかなかった。残っている文字から昔の人たちの心まで読み取って、そこから今後の心について考えるというのが新鮮だった。」
「シンギュラリティと文字の発明を結び付けたお話がとても面白かったです。甲骨文字の1つ1つの成り立ちを見ていくと、当時のものの見方や文化のこともよくわかり、今の漢字とのつながりもわかってとても興味深かったです。 特に、生贄の羌族の話で、羌族の不安が殷を倒し、羌族は自由を得たかわりに不安を得たという話が印象に残り、自由や心を得るには不安という代償が必要なのだという大きな発見がありました。」
「文字は記録のためだけでなく数字や時間の概念、体から生まれる情動などにつながっているというのがとても興味深かった。将来、文字の発生によるシンギュラリティ―と似たような大きな転換点を迎えることがとても楽しみになった。」
「夢十夜が始まった瞬間ひきこまれるような感覚がしてびっくりした。好きなことをとことん好きなように取り組んでいるんだなと強く感じて、きらきらしているように見えた。時間が経たないと後悔も悲しみもない、という言 葉がすごく心に刺さった。」
◎本日の学びや気づきを、今後の進路活動や学校生活にどのように活かしていくか
「理系だから当然理系の学部に行って理系の勉強をすると思っていたけれど、文系、理系にとらわれずに視野を広げて、広い分野を学ぶと面白いことに気付けると思ったので、視野を広げるようにしたい。」
「勉強してきたことと結びつくとおもしろいということが分かったので、勉強のモチベーションにしたい。これからは協力する学びになっていくらしいので、それができるようになりたい。」
「今起きている変化が、自分が思っているよりも重大なことだと知った。僕は、変わることを恐れずに波に乗っていきたい。」
「私が心のアップデートについて少しでも考えたことを、他の人の思考と合わせれば、大きな変化をもたらすことができると学んだ。また、本職を持ちながら海外公演をしている講師の方々の姿から、大手企業に就職することが常識だと思い込んでいたことを吹き飛ばせた。やりたいことを1つに絞らず、頑張っていこうと思う。」
「自分も学びたいことが多すぎて絞るのが大変だと感じていたが、安田さんのように様々な分野に精通することもできると希望をもらえた。」
「自分はデータサイエンス系の道に進もうと考えているのですが、今日の講演を聞いて、より情報学系に進む意欲がわいてきました。また、将来役立つか分からないことも積極的に学んでおけば、いつか自分のやっていることにつながるかもしれないと思いました。」