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東京都立小平西高等学校

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2023/03/13 今日の小西

令和4年度 第44回卒業式 学校長式辞 全文

第44回卒業式における学校長式辞の全文を掲載いたします。


式 辞  

只今卒業証書を授与した44期生の皆さん卒業おめでとうございます。皆さんは令和2年4月に44期生として入学し、3年間勉学に励み、本校所定の課程を修了しました。

267名が一堂に卒業できることについては全教職員の喜びとするところです。新型コロナウイルス感染症の影響により教育活動が十分に行えず、時差登校と分散授業、短縮授業、そしてオンライン授業、新しい日常という言葉の中に、学校での生活を見直しながらよく耐え忍んだ3年間でした。入学前に思い描いていた高校生活とはかなり異なっていたのではないかと思います。その中で本校での全課程を修了し、将来へ羽ばたく皆さんへのエールを送る意味で私からのメッセージを披露したいと思います。

紹介するのは昭和の映画スター、ブルース・リーが残してくれたメッセージです。ブルース・リーは、香港とアメリカの両方の社会で疎外されながら、国籍・人種の壁を越えてハリウッドで大成功を収めた世界的な映画俳優です。この人物を紹介する理由は人としての生き方や考え方が将来に役立ち、共感することがあると思い取り上げました。

ブルース・リーは武道家として鍛え上げられた肉体と甘いマスクで分断された世界のヒーローになりました。彼はバスケットボール界のスーパースター、IT革命を支えた中国系アメリカ人社会、戦禍を生き抜いた旧ユーゴスラビアの人々、香港の民主化運動の人たちに影響を与えました。そして夭折(若くして亡くなった)のヒーローとして残した言葉

「友よ、水になれ」というBe water ,My Friend が世界の若者の間で話題になり、心の支えとなっていて、そして言葉にまつわる報道が、
テレビ番組でも取り上げました。

ブルース・リーの残したメッセージはシャノン・リーという娘さんが生前の資料や思い出を掘り起こして本にして紹介しています。これから話す内容はその人生哲学です。その本に書かれている冒頭のブルース・リー本人が強調したメッセージを読み上げます。

心を空にしろ、型を捨て、形を無くせ、水のように。コップに注げば、水はコップ形になる。ティーポットに注げばティーポットの形なり、ボトルに注げばボトルの形になる。水は静かに流れることもでき、激しく打つこともできる。友よ、水になれ。

心を空にするとは、学んできたことをすべて忘れろという意味ではなく、自分の思い込みにとらわれず新しい何かを意欲をもって臨むべきだと言っていいます。静かに流れることができるとは、人生は流れる水のようであって、常に動いているものであるから、よどんだ水ではなく、動いている水のごとく経験が移り変わっていくことを示しています。さらに水がせき止められれば、その勢いが蓄積され、開門とともに勢いをつけて待ち構えていたかのように目標に向かって勢いよく自然に流れだしていきます。水は障害物に逆らうことなく自然に流れ、また、石を砕くほど強さを引き出すことができます。しかも、水は流れに定めに従い自分の行きつくところを知っているがごとく流れます。これは私たちへの生き方になぞらえることができます。例えば、大きな目標や課題を達成させるための行動には大小を問わず必ず障害物が存在します。その時に大事なことはその障害物に反応する人の在り方であって障害物そのものではありません。立ちはだかる困難への在り方には、一つしかなくそれはその困難に人がどう反応するかとだと言っています。だからこそ、心を研ぎ澄まし、何が起きても対応できる準備を作っていくこと大切なのです。その準備とは練習であったり、トレーニングであったり、また、失敗を防ぐための確認作業であるかもしれません。その場の状況をしっかり受け止め柔軟でそして強く困難を乗り越えてほしいと思います。

皆さんが過ごしたこの三年間を振り返ると、入学前に思ってきた日常とは違った経験でしたが、それぞれの困難を比較することではなく、自らの貴重な学習の機会としてください。そして、毎日が変わらない日々であったとしても一日一日が貴重な経験となっています。川の水は、常に同じ水でないことと同様に過ごした日々は常に同じではありません。今までの困難な経験を次に生かすために対応として準備をしてきたことを思い描いてください。そして「Be water ,My Friend」高校生活を振り返ったときに思い出してください。

さて、結びになりますが、保護者の皆様、お子様の御卒業、誠におめでとうございます。心からお祝い申し上げます。また、在学中は学校に対して、御支援、御協力を賜り、感謝申し上げます。3年間、生徒たちが本校所定の課題をやりとげたことは、その努力とともに保護者皆様の御尽力の賜物だと感謝しております。学校を代表して御礼申し上げます。

そして、卒業生の皆さんにはこれまでと変わらぬ学校への思いと今後の活躍を祈念し式辞といたします。


令和5年3月8日
東京都立小平西高等学校長  井戸 康文