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2025/11/17 学校行事
大学模擬授業②(法政大学 鳥飼弘幸教授)
大学模擬授業の続きになります。
【最新の電気電子工学が拓く未来の医療】
二つ目の講義は、法政大学理工学部電気電子工学科 鳥飼弘幸教授の「最新の電気電子工学が拓く未来の医療」です。
鳥飼教授の研究室では、
①脳補綴(のうほてつ)装置
②人工内耳・人工嗅球
③機能的電気刺激装置
④遺伝子・臓器シミュレータ
⑤人工生物
⑥生物模倣ロボット
の研究について取り組んでいるそうです。
人間の脳は約10の11乗個(約1000億個)の神経細胞からできているとのことで、いわばタンパク質でできている電気回路、集積回路のようなものだとのことでした。
人間の脳のしくみを分析し、タンパク質ではなくシリコンを使って人工的に回路を再現していく試みを行っているとのことです。
その再現の過程で、技術を医療に応用していくというのが、鳥飼研究室の主命題になります。
②の人工内耳は、
内耳の中の聴覚細胞が何らかの原因で衰えてしまった人に対して、その聴覚細胞に機器で電気信号を送ることで音が聞こえるようにするというものです。
耳が完全に聞こえない患者さんにとっては神様のような機器です。
この人工内耳を制作するためには、人の内耳の仕組みを分析し、数学の方程式で表現することが求められます。
なので、「電気回路のしくみを理解するのも大事ですが、数学の講義も理解することがさらに大事です」と教授はおっしゃられていました。

例えば、
リンパ液 = 粘性流体の偏微分方程式
基底膜 = 膜の偏微分方程式
内有毛細胞 = 神経細胞の微分方程式
外有毛細胞 = 脳から指令を受けるアクティブダンパ
螺旋神経筋細胞 = 並列パルス密度変調器
となります。
③の機能的電気刺激装置は、脳と筋肉は異常がなくても、運動神経に異常がある方に応用できる装置です。
糖尿病などで神経系統に支障がでてしまった方のリハビリアシスト装置として応用ができるとのことでした。

この装置の研究・開発で法政大学の学生が国際会議で賞をとったとのことです!(大賞の一歩手前だったそうです)
法政大学の理工学部は研究力の高さに定評があります。
その他、④の遺伝子・臓器シミュレータでは、遺伝子を分析して動作を再現し、癌のシミュレーションに応用したり、⑤の人工コオロギについては、コウロギが発する音を電気的に再現し、会話する装置の研究をしたりしているそうです。
犬や猫と会話できる日もそう遠くないかもしれないですね。

生徒も講義内容に対して積極的に質問をしていました。
「脳に埋め込むチップの大きさはどれくらいか。1mm角のデバイスで砂糖の粒ぐらいの大きさで、その中に回路が組み込まれている。」
「脳の細胞の仕組み設計とAIは似ている部分もあるが別物である部分もある。脳を模擬するコンピュータの開発とAIの開発は相互にアイデアを共有し合いながら発展していくだろう。」
などの議論がなされました。

さらに鳥飼教授は、「杉並工科の生徒さんにぜひ法政大学への進学を考えて欲しいと考えています。がんばって勉強してください。」との励ましの言葉をいただきました。
今回の講義の内容は、法政大学の付属高校で講義した内容を用いてくださっているそうです。
一講義目の馬場先生の授業も二講義目の鳥飼先生の授業も、いずれの講義も大変興味深い内容で、生徒も鋭い質問をたくさんしていました。
さすがIT・環境科に入学してきた生徒だけあって、目的意識がはっきりしているなと感じました。
自分の大学での姿を思い描けたでしょうか。
今回の大学模擬授業を、今後の進路実現に向けて活かしていって欲しいと思います。
ご講義いただきました先生方におかれましては、お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございました。
この場を借りて、お礼申し上げます。