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2025/06/18 学校行事
IT・環境実習①
今年度から「IT・環境実習」の授業が始まります。IT・環境科の2年生が受講をします。
IT・環境実習は、内容の異なる複数の講座がありますが、そのうちの一つ、「情報やデータサイエンスの分野」の講座について、ここで取り上げていきます。
内容は「Jetsonを用いた画像認識」です。3回シリーズで、今回はその第1回目になります。
まずJetsonとは何か。
NVIDIA(エヌビディア)というアメリカの企業が開発したコンピューターボード、簡単にいえば小型のパソコンです。ちなみにJetsonは、1台10万円以上します。
JetsonはGPU(Graphics Processing Unit)という機器を搭載しています。
GPUとは、画像処理に特化した処理装置のことです。
画像を描画するためには、膨大な計算をこなさなくてはならないので、計算処理能力に優れていなければなりません。よって、GPUは特に同時に複数の計算処理を行う「並列処理能力」を持っています。
通常のパソコンのCPUで計算するより100倍以上の速さがあります。
GPUはこの処理能力を生かして、
画像処理(3Dゲームや動画編集などの高度なグラフィック処理を高速化する)の他、
AI開発(機械学習やディープラーニングのモデルをトレーニングする際に大量のデータを並列処理する)や、
科学計算(複雑な計算を並列処理で効率的に行うことで気象予測や分子シミュレーションなどの分野で活用する)
に活用されています。
まずはこのGPUを学ぶところから始めます。
Jetson自体も16GBの容量があるのですが、SSD:Solid State Drive(ソリッド・ステート・ドライブ)という記憶装置も使用します。
1TBの容量になります。
次にこのGPUの画像処理能力を実感します。
「液体」や「海面」、「煙」、「粒子」などの複雑な事象の画面上でのシミュレーションを体感します。
普通の演算装置ではここまで滑らかな画像にはなりません。液体などは「ぬめり感」まで感じることができます。
ゲームの世界でもすでに応用されていますので、この感覚は、グラフィックボードが搭載されているゲーミングPCを利用したことがある生徒であれば、すでに知っているでしょう。
そして、さらに画像処理の一種である。「オブジェクトトラッキング(物体追跡)」を体感します。
オブジェクトトラッキングとは、動画等から特定の物体の動きを追跡する技術です。
画像は、ピクセルという小さな単位で構成されています。画像認識では、まずこのピクセルデータをコンピュータが理解できる形式に変換します。
さらに、抽出した特徴(輪郭、色、明るさ、模様等)を基に、画像が何であるかを特定していきます。画像認識は、機械学習やディープラーニングを用いて、大量の画像データを学習することで実現されます。
続いて、物体検出アルゴリズム(今回はYolo v8)が各フレームから様々な物体を検出します。各々の検出は、物体の位置(x・y座標)とその大きさ(幅と高さ)を含みます。オブジェクトが移動したり、方向が変わったり、遮蔽されたりしても、その物体の一貫した識別を維持していきます。
実社会でオブジェクトトラッキングはさまざまな分野で応用されています。
例えば、医療分野では、医師や医療専門家が異常を検出したり、運動障害を追跡したり、ロボット手術を支援したりするのに役立ちます。
また、スポーツの分野では、コーチは選手の動きを分析し、ゲーム戦略を最適化し、結果としてチームの勝利につながります。
さらに、自動運転車や先進運転支援システムでは、歩行者、自転車、その他の車両の動きを識別、分類、予測するために必要不可欠な技術となります。
このように、この授業ではAI(人工知能)の一片を学ぶことになります。最初はなかなかイメージしにくいかもしれませんが、今日学んだことがAIの技術のどこに位置づくのかを常に意識しながら授業を受けられるとよいでしょう。
今回は付属のデモアプリを用いてオブジェクトトラッキングを体感しましたが、次回は画像認識技術のこれまでの変遷を学び、様々な「事前学習済みのモデル」を利用して、モデルによって認識精度がどのように変化するかを比較計測していきます!