一昨日になりますが、2年生全生徒を対象として、日本生物物理学会のご協力により高大連携模擬講義が実施されました。今回は、東京大学大学院・工学研究科応用化学専攻教授の野地博之先生を講師としてお迎えし、「回転分子モーターATP合成酵素」という演題でご講義いただきました。生命活動の直接のエネルギー源であるATPを合成する仕組みは、長い間謎でしたが、水素イオンの流れによってATP合成酵素が回転するさいに、ATPがつくられるという海外の研究者の仮説を、野地先生は間接的に可視化して証明されました。
その過程では、指導者の先生とも対等な立場で議論を交わし、専門分野が異なる研究者のところにも積極的に出向いて技術協力を得ることで、証明に成功したのです。
後半は、「Creation 0→1」すなわち、なかったものをつくるにはどうしたらよいかというテーマでお話くださいました。一つは物事を抽象化して応用範囲を広げること、もう一つは、分野の異なるものでもくっつけてみれば、新しいものが生まれてくるかもしれないということでした。


講義後、活発な質疑応答がなされました。研究が上手くいかないときにどう考えるかという質問には、研究は上手くいかないことの方が多いので、結果を出すまでのプロセスを楽しむことが大切だとご回答いただきました。
模擬講義には、3年生の希望者も参加しました。彼らは体育館での講義終了後に、進路室でたくさんの質問をしていました。先生は丁寧に答えてくだいました。ATP合成に関して、本来と逆の反応が起こったりするのはなぜか、との質問に対しては、生命現象に限らず多くの現象は確率で考える必要があり、本来とは逆のことが起こることは一定の確率であり得るとのご回答をいただきました。

以下に生徒の感想を紹介します。とても有意義な時間になったようです。
いままでは常に新しいことを生み出す力が必要で、自分にはそのような力がないと思っていましたが、今日の講義を聞いて、(1)小さな事でも抽象化していろいろなことに当てはめてみる、(2)いろいろなことをくっつけてみる、という2つのことを考えるときに意識してみたいと思いました。まだ将来やりたいことは決まっていないのですが、「答えが出ないときには旅に出る」「結果だけ見るのではなくプロセスを楽しめるようにする」ことを普段の勉強でも生かしたいです。