東京都立野津田高等学校

今年度一学期の始業式で2・3年生にお話ししたことの一つに時間を大切にすることがありました。それはスポーツになぞらえて、こんな話でした。「どんなに能力のあるプレーヤーでもキックオフやプレーボールの時間にその場にいなければグラウンドやコートには立てません。時間はすべての人に与えられた、豊かな人生を送るための共通にして絶対的なルールであり、権利だということを肝に銘じて、学校のキックオフの時間を守りましょう。」こういう内容でした。
さて、どうでしょう。時間を守れていますか。人は好きなこと、興味のあること、自分にプラスになっていると実感できることは頑張れても、マイナスになっていることを修正することはなかなかできませんよね。でも、自分にとって「あぁ~今この時間プラスだぁ」なんてリアルタイムで実感しながら行動することなどまずありえません。そもそも今は何に興味や関心があるのかもわからないという人もいるでしょう。やってよかった、これをちゃんとやってきてよかったと思えるのは後になってからです。だから、今目線を上げて学ぶのです。今、この瞬間だけ楽であればいいなら、学校はいらない。寝たい人はねていればいい。ゲームをしたい人はしていればいい。でも、5年後も10年後も30年後も人間らしく生きがいをもって暮らすための経験を積んでおきたいなら、きちんと学ぶべきです。学校では、今実感がなくても、あとできっと役に立つ、自分自身の生き方や考え方につながる知識や知恵、他者の考え方、自然の摂理、科学、今に至るまでの歴史、これからの未来、人と人とのつながり、犬やサルではない人間としての今までとこれからを学んでいるのです。
さて、今、授業時間は45分です。長いですか、短いですか。サッカーで言ったらハーフ、バスケならおよそ1試合分ですかね。どうですか？そのたかが45分間のための練習に、何百時間費やしていますか。バスケでは試合中に10本も打てれば上出来なシュートのために何千本練習しているんですか。45分なんて転寝や、SNS、ゲームなんてしていたら、あっという間ですよね。でも、たかが45分でも、そのために莫大な時間を費やした結果到達した大事な45分や人生を左右するほどの価値のある45分もあるんです。当然、その45分のために費やした時間もまた、かけがえのないものになるはずです。今年はオリンピックがありました。柔道、たかが3分間の試合。隙を見せたら1秒もかからずに終わる。でも、その3分間のために莫大な時間を費やし、血反吐を吐く努力をしてきた。だから人はその3分間に引き込まれて感動するんです。ちょっと立ち話をしていたら過ぎちゃった3分間とは違うんです。体操。ほんの1分程度の競技時間でミスなく高度な技を成功させるために何千時間も鉄棒を握ってきた。その結果が競技の1分間に凝縮される。だからあの着地に感動するんです。ものすごい3分と1分なんです。
授業時間に話を戻しましょう。そこまでではなくても、45分の授業でしっかりと頭を働かせれば、新しい知識や考え方、疑問、発見、知恵の芽が生まれてくる。そんな時間が45分間もある。そんな45分間を過ごしている人と、寝坊してそもそもいなかったり、横向いて話していたり、机に突っ伏して寝ていた人の45分間では、時間の価値が全く違ってくるし、その積み重ねでこの後の人生も変わってくる。そもそも「未見の我」と出会えない。
時間はみな平等に与えられた権利ですが、その価値はその人次第、使い方次第です。また、その平等な時間を有効に使わないどころか、おしゃべりしたり、騒いだりして、人の大切な時間を奪っている人はいませんか。
もう一度言います。今実感がなくても、あとできっと役に立つ、自分自身の生き方や考え方につながる知識や知恵、他者の考え方、自然の摂理、科学、今に至るまでの歴史、これからの未来を学校では学んでいるんです。自分の可能性を見つける時間なんです。寝たいから寝る。しゃべりたいからしゃべる。そんなことは犬や猫でもやっています。
学校で眠くなってしまう人は、早く寝ましょう。ぼーっとしてしまう人はしっかり朝ご飯を食べましょう。しゃべりたくなる人は、我慢して机と顔を前に向けましょう。
最後に。新型コロナウィルスの感染者が徐々に増えてきています。変異株の市中感染も出てきています。マスクなんて嫌ですよね。人が多く集まる楽しいところにも行きたいですよね。でも、年末年始、自分と周囲の人を愛して行動してください。また、不安や悩みがあったら、周りの大人や、友達に相談してくださいね。一人で抱え込まないように。先生たちはいつでも皆さんの話を聞きます。校長室もいつでも開いています。